KANTA CANTA LA VITA

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2005年 10月 28日

赤いビル。

今夕、煮込みうどんを作りながらテレビからのニュースに耳を傾けていたら、興味深くも耳を疑いたくなるニュースが飛び込んできました。

「赤いビルに周辺住民が抗議運動」。

まさか、まさか、まさかあの赤いビルではないでしょうね。




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ええ、あの赤いビルでした。明日開館予定の東京イタリア文化会館新舎。

過激な赤のファサード(建物正面の装飾)の撤去・塗り替えを求めた抗議の声が、地域住民を含む2100人分もの署名となってイタリア大使館と千代田区役所に提出されたとの事です。

イタリアの公立の大学、美術学校、音楽学校への留学を希望するものは一度は乗り越えねばならない壁、それがこのイタリア文化会館とそこに提出する書類です。あまりの厳しさにこの段階で留学を断念する、あるいはそうせざるを得ない学生も過去にはいたとかいないとか。ボローニャ大学は国立ですので、僕も旧舎には二度行きました。僕も例外なく苦しい思いをして今に至ります。できることならもう二度と行きたくありません。そんなところです。東京イタリア文化会館。そして、その旧舎の道向かいにできたのが今回の新舎です。僕はこの赤いビルに対して、見ようによってはイタリアっぽいなかなかに斬新なそのおしゃれさ具合に、好印象を抱くと同時に何か知らん妬みというか僻みというか、「イタリア気取りやがって。」といったようなちょっと歪んだ感情も持っておりました。あるいは、これに似たものが今回署名した2100人にもあったのかも知れません。あの辺は皇居あり、靖国神社あり、武道館ありと、なんとなく「出る杭は打たれる」雰囲気の漂う地区です。あの赤い壁は、そう意味ではまさに格好の餌食なわけです。

それにしても、今日の報道の熱の入れよう。この赤い壁のほぼ真正面にある大学の学生の「授業に集中できません。」という声や、色彩学者(?)の「赤という色によってイライラや興奮が引き起こされる。」というコメントを挿入し、赤い壁の実際的な害悪を並べ立ててありました。確かに、山奥の大学に通う僕は、その窓の外に広がる、否、迫りくる木々の緑に、何度となく救われた記憶があります。これが、迫りくる赤い壁だったらどうだったでしょう。(僕の頭の不具合から来る)救いのない授業の唯一の目のやり場である窓の外に赤い壁がそびえていたら。そのまま無言で席を立ち、左手に緑色の伊和辞典と赤色の和伊辞典を、右手に白い傘でも広げて校舎の8階まで上り飛び降りるしかありません。

さてさて、不謹慎でおもしろくもないジョークは別にしても、どうしたものでしょう、東京イタリア文化会館。設計は仏・オルセー美術館やポンピドー美術館などを手がけた国際的建築家・ガエ・アウレンティが担当したとのことですし、そう簡単に塗りつぶすとかできるのでしょうかね。372人を収容できるホールなども設置されてあり、日伊文化交流の目玉、かつ要である建築物が地域住民の抗議の的になるなんて。国家間問題に発展して僕のイタリア行きがおじゃんにさえならなければ、塗りつぶすにしろそのまま「赤恥」をさらすにしろ頓着しませんが。

あ、「赤恥」なんて言葉を使いましたけど、僕は親伊派ですので、塗りつぶし反対に一票。
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by kantacantalavita | 2005-10-28 22:18 | 親愛なる日記 | Comments(7)
Commented by igrek at 2005-10-29 01:59 x
ボクはとてもモダンで素敵な建築物だと思います。
以前ポンピドーセンターが建築設計案で紹介された時、「パリの町並みが壊される!」と大反対を受けました。
今ではフランスで一番の集客力を誇る偉大な美術館として受け入れられています。きっとすぐに馴染みますよ。
Commented by kantacantalavita at 2005-10-29 11:11
モダンで素敵な建造物も、モダンも素敵でもない通りに在っては批判の対象となる好例でしょう。これが渋谷とか新宿とか心斎橋とか梅田だったらどうでしょう。新しい観光名所になっていたかもしれません。

面白いのは落成直前に抗議運動が起きたということですかね。設計案なり、完成図のようなものは前々からあったはずなのに、そしてそれを多くの人が目にしていたはずなのに。

ある一時期、真剣に憎んでいたことがありますが、今は応援します。
Commented by のい at 2005-10-30 12:26 x
はじめまして。この赤い壁に関して検索したらヒットしたので記事読ませていただきました。
私もニュースで見ただけで実物を見てはいないですがとても残念に思います。イタリアには建築物の外観に関して厳しい規制あるはずです。欧米諸国はそのような規制で美しい町並みを守っているわけですが、美しい都市を持つイタリアの方が日本であんな建物を造ったのが信じられません。
ビル単体でみれば確かに現代的で美しく評価に値する建物だと私も思います。しかし実物を見る際、それは不可能です。私達には周りの風景とともに見ずにはいられないのです。あと完成図などは、周囲の住民など最もその建物を目にするはずの人には見せられないことが多いです。例え見せられたとしても、ビル単体の完成図であり周囲の景色は描かれていません。実際建てられてみないとわからないのです。
これは欧米では一般的な考えですが景観はみんなの共有物です。ビルの持ち主のものではありません。ビルの持ち主がその外観にこだわっても、それを自分で眺めることは少なく、多くの場合は周囲に見られるのですから。
こんな批判的なことを書いてしまいすみません。不快に感じたならば削除してくださって結構です。
Commented by nodako at 2005-10-30 17:52 x
>のいさん
私ものいさんに賛成です。
私は今イタリアに住んでいますが、例えば場違いにやたらとシックなお店は普通に攻撃対象になっています(若者がふざけて『ここはミラノじゃない』と落書きをしていたり)。
法律でも、外壁一つ改修するのにも規制がものすごく厳しいと聞いています。
しかもイタリアでもよく見るイタリアっぽい雰囲気の建物かというと、全くイタリアでは見かけないような(あったとしてファシズムの建築くらいでしょう)この無機的で攻撃的な色、ちょっとショックです。
ポンピドゥーは、まだ色が白というか透明で街に溶け込む余地がありますが、イタリア文化会館はあまりに周囲を無視している感じがします。ただKantacantalavitaさんがおっしゃったように、直前に抗議運動が起きたのは残念です。これじゃ今さら変更するのはほぼ不可能な気がします。
Commented by kantacantalavita at 2005-10-30 23:02
のいさん、nodakoさん、ありがとうございます。

あの赤、イタリア文化会館側(設計者)によると日本の赤をイメージしたらしいですが、赤いビル抗議団体の代表者らしき人は「血の赤だ!!」と、そして近隣の大学職員は「錆止めの赤」と言ってました。この双方の食い違いというかズレも面白いですね。そして、日本の赤(番組内では「漆塗りの赤」としてました)だからと言って、街中に真っ赤な建物があってそれが景観になじむかどうかに考えが及ばなかった景観を大事にする国の設計者とそれのGOサインを出した景観を大事にする国の文化会館に、文化交流に一役買われているこの現状も興味深いです。交流はあっても、あるいはそれさえままならないこともしばしばなのに、ましてそこに相互理解はありえないのかと。

(つづく)

Commented by kantacantalavita at 2005-10-30 23:05
(つづき)

ただ、igrekさんが言及されているように、フランス人のみならず日本人やイタリア人を含むかなり多くに人間は、批判の対象が、良い美術品を収蔵してるなり、目を見張る集客力を持つなり、あるいは著名人がそれを認める発言をするなりなどで肯定的に世間に知れ渡ると、一転にして「あすこは素晴らしい。」などと言いかねない現金さも持ち合わせているので、一概に「抗議運動の勃発=即撤去、即塗り替え」は、あまりに短絡的に過ぎるのではないかと思うわけです。案外、半年もしたら、「あの赤はフェラーリの国の赤だねえ。」とか「意味のわからん赤い壁が、イタリアの歴史を感じさせるねえ。」とか言っちゃってるかもしれません。そしておそらく、そうなるかどうかはイタリア文化会館が文化会館として立派に勤めを果たしてくれるかどうかに因るでしょうし、その仕事次第では意外に早い時期に、九段南の名所としてあの赤い壁が多くの人に受け入れられる日が来るかもしれません。それに値する機能を東京イタリア文化会館は持っていると信じていたいです。

いずれにしろ、文化会館と抗議団体の動向は目が離せません。


Commented by kantacantalavita at 2005-10-30 23:14
igrekさん、のいさん、nodakoさん、コメントありがとうございます。主に私のあほな駄文・雑文の見本市である当ブログに、お三方のコメントは抜群のスパイスになっているように思われます。


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