KANTA CANTA LA VITA

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2006年 04月 03日

大家から出された「妥協案」について②

最悪の目覚めをしたその朝、コーヒーを飲んでいる間も彼女の上機嫌は続き、やたらと話しかけてきます。僕が彼女を侮辱したことやそれによって彼女が受けた心の傷、この家から去っていった人たちの(彼女だけが甘いと考えている、聞く限りでは苦い)甘い思い出やここボローニャで家を探すことの大変さ、そうしたことをほとんど途切れることなく喋りまくっています。そうした気持ちの良い朝にしてはヘヴィすぎる内容にもかかわらず、あの「ギラ・ニヤ」した微笑みは依然湛えたままです。

話の内容のあまりのくだらなさとそれを聞くことによって失われる時間の無意味さに僕がうんざりして部屋に逃げ帰ろうとしたのを見計らったかのようなタイミングで、

「Cantaと話したいことがあるの。」

それまでは若干狂った感のある未亡人の独り言と聞き流していましたが、カンヴァセイションの相手に指定されるとそうする訳にもいきません。あの「ギラ・ニヤ」は、まるで最初から存在さえしていなかったかのようにすでにそこにはありません。驚くべき態度の急変を目の当たりにしたその時から、何かあるだろうなあとは思っていて、その有力候補の最左翼が「彼女は何か僕に頼みごとがある」だったのですが、この時点ですでに当選確実、赤い模造花が僕の胸に咲き、間を置かずして見事当選発表、達磨の目に墨が入れられます。

「この家から出て行ってほしくないの。」

衝撃。つい数日前に僕が出て行くと言うのを聞いて、「すごおおおおおくうれしいわ。 Sono mooooooolto contenta.」と皮肉たっぷりに言ったのは本当に彼女だったのでしょうか。頼み事があるであろうことまでは想像していましたが、まさかこの期に及んでこの家に残れと言われることなど誰が予想できるでしょう。引き攣った笑いが僕の顔に浮かんだという意味においてはそれは衝撃であると同時に笑劇でもありました。(つづく)
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by kantacantalavita | 2006-04-03 19:07 | 親愛なる日記 | Comments(0)


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