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KANTA CANTA LA VITA

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2006年 09月 22日

ルッツァーラ Luzzara (その1)

9月20日、エミーリア・ロマーニャ州レッジョ・エミーリア県ルッツァーラ町(Regione di Emilia-Romagna, provincia di Reggio Emilia, comune di Luzzara)に行ってきました。



世界的に有名なイタリア映画の代表的脚本家チェーザレ・ザヴァッティーニを産んだ町ルッザーラは、近隣の自治体にでも住んでいるか、あるいは鉄道関連で職を得ているかしない限り、世界的にはおろか、イタリアでさえほとんど知られていません。全く知られていないと言っても良いくらいです。公正な言い方ではないかも知れませんが、これまでザヴァッティーニ関連以外でその名を目にすることはありませんでしたし、行って帰ってきた今でもその印象は拭えていませんし、結局のところそういう町なのです。1902年9月20日、僕が修士論文で取り上げている(否、取り上げることになるであろう)ザヴァッティーニはこの町で生まれました。

ルッツァーラ Luzzara (その1)_e0017332_705441.jpg朝焼けのボローニャを7時44分に出発し、モデナModenaで乗り換え、スッツァーラSuzzaraでさらにローカル線に乗り換えて、約2時間かけてたどり着きました。少し余計に時間はかかりますが、パルマParmaを経由すれば、乗り換えは一度で済みますが、いずれにせよ、スッツァーラ-ルッツァーラ間、パルマ-ルッツァーラ間は列車の数が少ないため、通勤通学帰宅ラッシュ時(仮にそういうものがあれば)以外は代替のバスが運行されています。実際、僕が乗ったのも、行きも帰りもこの代替バスでした。

乗り換えの駅名と列車の発着時間だけを調べて出発したため、モデナでの乗り換えの際、ただでさえ時間が少ないのに行き先しか記されていない電工掲示の時刻表にやや慌てましたが、おぼろげな都市の位置関係と列車の出発時刻を頼りに何とかヴェローナVerona行きの列車に飛び乗りました。

ルッツァーラ Luzzara (その1)_e0017332_712890.jpg快晴のボローニャとは打って変わって、モデナを出て田園地帯に入り程なくして、辺りは霧に包まれました。20m先は全く見えないような霧です。有楽町の「ヴィスコンティ映画祭」で『白夜"LE NOTTI BIANCHE"』を観て以来、実際の霧も映画の霧もすごく好きなので、ただでさえちょっとした小旅行に高ぶる感情がさらに震え出します。と同時に、僕の脳裏にもジミ・ヘンドリックス的に不安という名の"Purple Haze"が立ち込めました。停車する駅々、その駅名が見えないのです。霧のせいではなく、完全に路線の構造上の問題です。駅名を示すものはプラットホームには何ひとつなく、あったであろうはずの場所には看板のもぎ取られた柱だけだ残り、駅舎の側面に色褪せてへばりついているのがどうやら唯一のようです。再び動き出してようやく唯一の駅名看板が出てきたときなどはどうしたらよいのでしょう。動き出して初めて自分の降りる駅だとわかったとき・・・。スッツァーラまでの幾つかの駅で結局駅名がわからなかった駅が二つありました。これは霧に見とれている場合ではなく、駅名看板の発見に全力を尽くすか、少ない乗客に聞いてまわるしかなさそうです。あ、言うまでもなく、そのようなローカル線の列車には車内アナウンスなどありません。

ルッツァーラ Luzzara (その1)_e0017332_7131134.gifとは言え、ポー側流域の霧は全く見事で、『戦火のかなた"PAISÀ"』や『にがい米"RISO AMARO"』はこの辺りで撮られたはずですし、正確には場所はもう少し北でしょうけれども、それでも激しい抵抗運動や美しすぎるシルヴァーナ・マンガノSilvana Manganoの太ももを想像せずにはいられませんでした。深い霧の切れ間に雉が羽ばたき、野兎が駆け、僕を喜ばせます。


ルッツァーラ Luzzara (その1)_e0017332_715752.jpgスッツァーラ。名前はルッツァーラと一文字違いのその町の印象は、何よりもまず鼻に飛び込んできました。豚小屋臭い。生ハムで有名なパルマに程近いこの近辺では養豚が盛んなのは想像に難くありません。で、その結果町全体が豚臭くなるという訳でしょう。「臭く」などと書きましたが、匂いというものは記憶に残るもので(参照)、僕の育った集落も牛が飼われている小屋が幾つかありましたので、どこかしら郷愁を誘う匂いでもありました。少なくとも、排気ガス臭い町と豚臭い町を選べといわれれば、僕は間違いなく後者を選びたいのです。

ルッツァーラ Luzzara (その1)_e0017332_7332416.jpgスッツァーラからルッツァーラの道は期待していたほど美しいものではなく、貨物用のやたらと大きなトラックやそのために整備された道路だけが記憶に残っています。道路までもが美しく見えたトスカーナの田舎(左)とは、エミーリア・ロマーニャの田舎はずいぶん違うようです。

バスに揺られて10分ほどで、ルッツァーラに到着しました。バール(立ち飲みのコーヒー店)が1軒、改装中の散髪屋が1軒、車が2、3台停まっているそれだけの広場に置き去りにされるようにして降り立ちました。

(つづく)

by kantacantalavita | 2006-09-22 05:32 | 親愛なる日記


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