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2007年 07月 02日 ( 1 )


2007年 07月 02日

Il cinema ritrovato 2007(ボローニャ復元映画祭点描その2)

【初日】の記述を改めました。色映画について、tinted(imbibito/imbibizione)とtoned(virato/viraggio)が判明している場合は、前者を染色、後者を調色と記します。いずれかがわからない場合は単に、「カラー」とし、その他のステンシル、手着色は総じて着色とします。

【2日目】 2007年7月1日(日曜日)

昨晩は見事な満月を楽しみながら帰宅。今朝は自転車で家を出て、間もなくブレーキのワイヤーが切れる。早速遅刻しそうになる2日目のスタート。

9:00- Asta Nielsen: il linguaggio dell’amore ~アスタ・ニールセン特集 愛のことば~
 ・"DEN SORTE DRØM"
  監督:Peter Urban Gad
  製作:デンマーク 1911年 
  35mm 1025m 56分(16fps) 白黒 ドイツ語インター・タイトル
  伴奏:Marco Dalpane
【ひとこと】オリジナルの全長は1381m。1999年に、デュープ・ネガから作られたポジ・プリント。若干客が少ないように感じる。黒い衣服の色が「反転する」ように見える劣化。壁に映る影の具合で、ライティングがずいぶん下からであることがわかる。最初の字幕が出るまで長い(出たところでわからないのだけれど)。ロケ撮影で強風だったりすると喜んでしまう。食事のシーンで、左右のカーテンによって縦長フレームになる。途中でずいぶん大きな糸くずのごみが映り込む。まだ終わってないのに"SLUT"の文字。男の部屋の鏡の存在理由は、画面外と画面内の視線を作るためだ、「電話は鳴るし、シャツは破れる」のだ、何にでも理由はある。

 ・"BALLETTDANSERINDEN"
  監督:August Blom
  製作:デンマーク 1911年
  35mm 766m 37分(16fps) 白黒 デンマーク語インター・タイトル  伴奏:Marco Dalpane
【ひとこと】舞台袖ショット。画面奥に反対側の袖。野外で蚊を叩くのはパントマイムか、非演技か。黒がべたっとした表情のない黒になっている。本当はいろいろ映していたであろうことは何となく想像できる。珍しく年配女性ふたりの解説者。世界の超絶無声映画伴奏家たちと比べると、我らがマルコはミスタッチが多いことが、イヤでもわかってしまう。

10:45- Cento anni fa: i film del 1907 - Pathé 1907 (Parte prima)
 ~100年前特集 1907年の映画 パテ社の1907年 第1部~
  ・"ÉTABLISSEMENTS PATHÉ FRÈRES"
  製作: Pathé フランス 1907年?
  35mm 32m 2分(16fps) カラー
 ・"LES DEUX SOEURS"
  製作: Pathé フランス 1907年
  監督:[Albert Capellani]
  35mm 195m 9分30秒(18fps) 白黒
 ・"LE BAGNE DES GOSSES"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 196m 11分(16fps) カラー
 ・"LE PETIT JULES VERNE"
  製作: Pathé フランス 1907年
  監督: Gaston Velle
  35mm 130m 7分(16fps) カラー
 ・"LES APACHES DU FAR-WEST"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 187m 10分(16fps) カラー
 ・"LES FAUX-MONNAYEURS"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 125m 7分(16fps) 白黒
 ・"LA GRÈVE DES NOURRICES"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 184m 10分(16fps) 白黒
  伴奏:Donald Sosin
【ひとこと】Stéphanie Salmon(Fondation Jérôme Seydoux-Pathé)のフランス語による解説を、イタリア語と英語の同時通訳で聞いてる人の少なさ。アーカイヴを案内してくれたアンナ・フィアッカリーニAnna Fiaccariniも同席するが、パワー・ポイントの操作のみで何も話さず。Pathé Frèresの工場内部の写真。着色作業のものが見れたのは貴重だ。①リュミエールの『工場の入り口』みたいな作品。やや俯瞰ショットだから画面の密度はまったく違うけれども。馬車の荷はフィルムなのかな。 ②窓の外の屋根の上にパテ鶏がいる。パテ作品を見てて楽しいことのひとつは、このパテ鶏を見ることである。病床の母のシーンでは黄色の染色に色ムラが見て取れる。③展開の早い孤児の物語。警察内部のシーンでは、剥がれたような感じで決定的に画が失われている。犬小屋内部のショットは調色に見える。④ジュール・ヴェルヌを読む少年は夢を見る。黄色い部屋がろうそくを消して青に変わり、点けてまた黄色に。異星人の顔は筆で着色したんじゃないか、確証はない。海底のたこ(枕)に襲われるシーンは、大事な部分で画が劣化している。目が覚めて、羽毛枕をぶちまけた時には、思わず声を出してしまう。⑤伴奏がとても良い。白い馬が白く、黒い馬が青いのは青の調色じゃないのか。ちらっと見えたパーフォレーションは一個しかなかった(直後にマスケリーノの調節があって真偽は判らず)。水に飛び込む馬に性格が現れる。⑥パテ鶏があちこちに。銃を撃ちまくる警官と刑事。贋金つくりの装置は書割。⑦乳母の仕事放棄。子供たちは本気で泣いている。牛から直接ホースで乳を飲む3人の子でFin。

12:00- Ritrovati & Restaurati ~再発見と修復特集~
 ・"L'INFERNO"
  製作:イタリア 1911年
  監督:Adolfo Padovan/Francesco Bertolini
  35mm 1200m 65分(16fps) 染色調色 イタリア語インター・タイトル
  伴奏:Antonio Coppola
【ひとこと】Davide Pozzi(L'Immagine Ritrovata)による解説。詳しくはCinegrafieを読めと。今回の映画祭のひとつの目玉とも言え、事実立ち見が出たのは初めてだ。批評家Tatti Sanguinetiまでが立っている(自分で椅子を用意した)。復元は、British Film InstituteとUCLA Flim and Television Archiveからの染色調色ナイトレート・ポジと、Danske Filmmuseum、Bulgarska Nacionalna Filmoteka、American Film Instituteからの白黒ネガを使用して、ボローニャのラボで行なわれた。複数のプリントがあるにもかかわらず、復元は始まったばかりでまだ決定版ではないとのこと。復元プリントを見ていて、ほとんどが染色かと思ったが、一部の海(川?船が出てくる)のシーンで、よく聞くピンクの染色と青の調色の併用を見たつもりでいる。多数の特撮は、『神曲』をイタリア語で呼んでみようかなと思わせるほどに楽しい。ワン・ショット内の色の変化。回想シーン。豹、ライオン、ケルベロス、蛇、ワニ?、などの造形には納得していない、狼だけ犬を使ってお茶を濁そうとしたってそうは行かない。複数の出処の違うプリントを使っているから当然ではあるが、画質の良し悪しにばらつきがある。巨人の大きさを表すために、もちろん単純な合成も使うが、さらに単純なパン・フォーカスの遠近法が使われているのにはニヤリとする。地獄から出るときのラスト・ショットの影絵的逆光的霧的美しさ。

14:30- 雑誌"Cinegrafie"第20号紹介
【ひとこと】Paola Cristalli (Cineteca di Bologna)とMichele Canosa (Università di Bologna)が、「チネグラフィーエ」映画祭特集号の紹介をする。"L'inferno"の後で、カノーザ先生には挨拶した。

14:45- Cento anni fa: i film del 1907 Pathé 1907 - Parte seconda
 ~100年前特集 1907年の映画 パテ社の1907年 第2部~
 ・"FABRIQUE DE CHAPEAUX DE PAILLE À FLORENCE"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 125m 7分(16fps) 白黒
 ・"LE CHAPEAU DE MADAME"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 125m 7分(16fps) カラー(インター・タイトル以外は白黒)
 ・"L'INDUSTRIE DE LA BOUTEILLE"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 100m 5分30秒(16fps) 白黒
 ・"PAIN À LA CAMPAGNE"
  製作: Pathé フランス 1907年
  35mm 160m 9分(16fps) 白黒
 ・"WORK MADE EASY"
  製作:Vitagraph アメリカ 1907年
  35mm 141m 5分(24fps) カラー(一部着色)
 ・"LA LUTTE POUR LA VIE"
  製作: Pathé フランス 1907年
  監督:Lucien Nonguet
  35mm 275m 15分(16fps) カラー
  伴奏:Donald Sosin
【ひとこと】①②は帽子関連で、前者は製造工程を、後者は大きすぎる帽子をネタにした喜劇。②はインター・タイトルだけ真っ青な染色フィルム。傷は目立つが、画自体はとてもきれい。③瓶の製造工程、ガラスを吹くおじさんのほっぺたがすごい。④田舎風パンの作り方を畑を耕すところから描く。ベルトルッチの『1900年』的な機械化が見られる。去年の「ホームムービーの日」で見た長いヌンチャクのような道具でする脱穀(の前段階?)。⑤労働を代わりにしてくれる「手回しのカメラ」みたいな装置。手着色と思しき色(機械の部品の黄、茂みの緑、労働者のオーバーオールと技師のジャケットの青)。コマ撮り、逆回転高速運動などの特殊効果。⑥人生の教訓を得る。火事の「赤いシーン」は特に傷みがひどい。点々の劣化。この伴奏者はピアノ上に設置されたモニターではなく、普段チネテカの専任伴奏者Marco Dalpaneがやってるように直接スクリーンを見ていた。

16:10- Ritrovati & Restaurati ~再発見と復元特集~
 ・"TRANSES / AL HAL"
  製作:モロッコ 1981年
  監督:Ahmed El Maanouni
  35mm 87分(24fps) カラー オリジナル・アラビア語版英語字幕
【ひとこと】今年のカンヌで、マーティン・スコセッシMartin Scorseseによって発表されたプロジェクト「ワールド・シネマ・ファンデーションWorld Cinema Foundation」最初の復元作品。複数の監督が支持を表明し、アルマーニ、カルティエ、カタール航空などが協賛している。にもかかわらず、である。これだけお金がありそうな人たちが集まって、どれほどの仕事がなされるのだろうか。一作品にどれくらい時間と労力を割くのだ。世界にはまだ無数のフィルムが残っており、その意味で重要なのは、一本一本の作品の復元よりも、今あるフィルムをきちんとした条件で保存できる環境の確保であると言ったのは、パオロ・ケルキ・ウザイだったか。まあ、そうは言っても、それでもやっぱり一本ずつ少しずつ地道にやっていくしか、できることはなのだけれども。復元プリントのはずなのに、冒頭でサウンド・トラックに乱れがあったのは、おそらくチネテカの音響システムの問題じゃないかしら。アラビア語の映画の中に、字幕でGodとかLordとかを見ると違和感を感じるのは変かしらん。監督Ahmed El Maanouni、プロデューサーIzza Genini、カンヌ映画祭代表Thierry Frémauxらの解説は、イタリア語、フランス語、 英語が混じって大変。チネテカのGian Luca Farinelliのフランス語を聞いて、「けっこうわかるな」と思った自分が恥かしい。

18:00- Matarazzo. Romanzi popolari ~ラファエッロ・マタラッツォ特集~
 ・"IL BIRICHINO DI PAPÀ"
  製作:Lux Film イタリア 1943年
  監督: Raffaello Matarazzo
  35mm 81分(24fps) 白黒 オリジナル・イタリア語版英語字幕
【ひとこと】登場人物が恐ろしく喋りまくという意味で、50年代のメキシコ時代のブニュエルを想うが、イタリア語なので大いに楽しんだ。もちろんそこにはきっと、Zavattiniの功績があるんだと言うのは、間違いなく間違っている。Nino Rotaの音楽。ワイプがたくさん使われるが、中でも左から右に動く車に合わせたワイプには驚く。寄宿学校で自由を叫び、お仕置き部屋(cella di rigore)に閉じ込められる、1943年の映画である。16mmカメラが映る(がこれも問題を引き起こす一因となる)。イタリアの売れっ子に数えられるステファーノ・アッコルシに雰囲気が似た新婦Franco Scandurra。口が達者で気が強い新婦の妹イレーネIrene(平和の意)、あれやこれやと振り回されるもちょっととぼけた召使ジュスティーナGiustina(ちょっとした正義の意)。駄目弁護士が現れてからの加速度に、心地良い酔いを覚える。姉妹がやってきた夜のやり取り、カロリーナという名の机、"sotto la protezione nel mio letto(私のベッドの中で奥さんは保護されております)"。きのこリゾットで盛り上がる最後の弁護士邸なんか最高である。50年代の"neorealismo popolare"への系譜。最後に叔母さんが自ら「私、未婚signorinaなの」と言ったが、冒頭で庭師がその伏線を張っていたのを今思い出す。

22:00- Ritrovati & Restaurati ~再発見と復元特集~
 ・"BLIND HUSBANDS"
  邦題:『アルプス颪』
  監督:Erich von Stroheim
  製作:Universal Film Mfg アメリカ 1919年
  35mm 2045m 90分(20fps) 染色 
  ドイツ語インター・タイトル版英語イタリア語字幕
  伴奏:Neil Brand
【ひとこと】完全版として唯一見ることのできるシュトロハイムのデビュー作、として知られていたが、今回のヴァージョン(ドイツ語インター・タイトル、オーストリア版)は、長らくMoMAに保存されていた白黒版(これを今までは完全版としてきた)より長く、さらに染色版である。昔見たのは、白黒の16mmだったはずで、MoMA版に欠けていたという箇所はもちろんわからず。「知りたければDVDを買って」、という解説。山登りのシーンには普通に拍手。鏡の前の女、フォーカス送りで奥に寝る夫、ディゾルヴで別の新婚夫婦の幸福、そして順を逆にたどって元のショットに戻る場面には諸手を揚げて拍手、合成に見えないよ。黒背景の女と、女の夢の中の首と手だけシュトロハイム。字幕が飛び跳ねたり、デジタルでしか取り除けない傷は残してあると言うAlexander Horwath (Österreichisches Filmmuseum)の解説、なぜならそれが、公開当時見ていたものにより近いからとか。シュトロハイム、すごく良い。
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by kantacantalavita | 2007-07-02 04:26 | 映画経験(filmについて) | Comments(0)