KANTA CANTA LA VITA

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2006年 10月 31日

FICC2007

FICC 2007 N.0001の『KANTA CANTA LA VITA』です。

ボローニャのシネマテーク"Cineteca Bologna"では、プログラムによっては年間会員しか鑑賞できない作品というのがありまして、その年間会員というのがFICC(正式にはFederazione Italiana Circoli del Cinema)の会員で、僕は当然昨年から会員になっているわけですが、先月大学の学生証と一緒にその会員証も落としてしまって、もぎりのお姉さんらに相談すると、再発行は面倒だから別になくてもいわゆる「顔パス」で良いよと言うのでほったらかしにしていたのですが、昨日来季用の会員証が届いたとのことで、特に急いでいた訳ではないのですが何か手ぶらなのもイヤなので早速再入会しましたところ、その会員番号が0001番で、少ししか期待していなかったんですけれども、いざそういう番号を手にすると何かしらうれしいもので、これまで「1番」とは無縁の人生でしたが、これで名実共に「ボローニャで一番チネテカに通っている人(自称)」という肩書き(ああ、肩書きにも無縁だったこれまでの人生)を手に入れました次第です。

・・・むふ、良いでしょ。


話は変わりまして、外部サイトでコラムのようなものを書くことになりました。当ブログとの相互リンクでもある『大阪ドーナッツクラブ』がそのサイトです。ここではあまり書ききれていないチネテカ(フランス語の「シネマテーク」)について、「チネテカってどんなとこ?」、「チネテカには何があるの?」、「チネテカってそもそも何?」というような事をボローニャから発信していく予定です。僕自身、そういったことを整理する場を求めていただけに、とても楽しみにしています。どうなることやら。詳細は追って告知いたします。
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by kantacantalavita | 2006-10-31 21:43 | 親愛なる日記 | Comments(2)
2006年 10月 29日

ポルデノーネ無声映画祭2006雑記

一応、前回の投稿で、「無声映画祭の何となくの紹介」、「映画祭の写真」、「特集・プログラム・イベントの紹介」、「映画祭のプログラムに関係する日本のイベントの紹介」、「映画祭初日から最終日まで」という流れでお届けしました、今年2006年のポルデノーネ無声映画祭を報告は終了です。全く学術的考察ではない、何かしら日記のようなのんきなものを目指したつもりですが、その時々で付け焼刃的な専門用語が出てきたり、掘り下げることなく丸投げにしてしまっているのは、僕自身の「まだまだ」の未熟さで、まあ今回はわれながらこれで良しとします。

ところが読んで頂ければはっきりと感じられるとは思うのですが、実に「取りこぼし」の多い報告でもあります。そりゃそうです。2週間も前のことを克明に記憶している脳みそなど持ち合わせていませんし、それを取り繕う雄弁な筆もありません。本来からして観た端からその映画のことを忘れてしまう傾向にある、ザルのような脳みそとその所有者なのです。そういうのは気づいた時や何かの折に思い出した時に、追々書ければ良いかなあと思います。

で、いきなり幾つかの補足。

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映画祭期間中、毎日18:00から書籍市会場脇の広場で開かれる「ミーティング」で唯一参加したイタリア映画界に関する座談会"immagini del cinema italiano"では、色々と興味深い話を聞くことができました。オンラインの所蔵目録をそれぞれのシネマテーク/アーカイヴが作るとか作らないとか、そのことに関して「ローマの『チネテーカ・ナツィオナーレ』はどう思うんだ!!」「フィルムを隠すな!!」とか、30年代のイタリア映画DVD集が作られるとか(この会社からはすでに「マリオ・カメリーニ×ヴィットリオ・デ・シーカ作品集」というのが発売されてます)、フランス人の学生がイタリアのシネマテークに関する本を執筆したとか、そんな話です。膨大な量の映画資料を抱えるトリノの映画博物館が具体的な計画を述べるかと思えば、ミラノのルーチェ映画会社は多くを語らず何か含みを残した印象を与え、聴衆に混じって話を聞いていたボローニャのチネテカ関係者は途中で姿を消し、国立であるチネテーカ・ナツィオナーレは最後の最後まで口を開かず、どこか知らん、開かれているようで謎の多いフィルム・アーカイヴ事情を垣間見た気がしました。座談会後に振舞われたワインとちょっとしたおつまみはとても美味しかったです。

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映画祭終了後、ボローニャに帰る前に、ポルデノーネから程近いカザルサ・デッラ・デリツィアに立ち寄りました。ピエル・パオロ・パゾリーニのお墓がある町です。前にも記しましたが、この町にあるパゾリーニ資料館の道向かいBar(喫茶店)のオーナーの息子がポルデノーネ無声映画祭の運営委員の一人です。先月9月20日にザヴァッティーニの墓参りもしたこともあって、パゾリーニの眠る町はどんなものかと興味はありました。無宗教者だったパゾリーニらしく、何の飾りもないただ名前だけが記してある墓石でした。質素だったザヴァッティーニの墓よりもさらに飾らず、でも、傍らに一本の木が植えてあるところは両者に共通しています。はるばる日本(実はボローニャとローマ)から墓参りにやってきた僕らに影響されたか知らん、Barでたむろしていたおじさん連中の一人が自転車を引いて同じ共同墓地にやってきたりもしました。穏やかな日曜日の穏やかな午後でした。

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映画の誕生について。以下は、ミケーレ・カノーザ先生の「映画学Filmologia」という授業で、先生が言ってたことの受け売り。一つの考え方ではあると思いましたし、なによりこれまで全く考えてもみなかったことなので少し。「エジソンのキネトスコープは誕生から程なくして手作業で色が付けられるようになった。リュミエール兄弟のシネマトグラフの映写では、最初の上映からすでにピアノの伴奏がついていた。このことを踏まえると『映画cinema』はそもそもカラーとサウンドを含んだものだった。白黒映画や無声映画とはその後に生まれたものなのだ。色にしろ音にしろ後から付け足されたものではなく、取り除かれたものだ。」どうです?新しい気がしませんか?それとも僕が知らな過ぎただけかしら。先生は一般的に考えられている映画史の方向性とはちょっと違うそれを強調してました。繰り返しますが、「一つの考え方ではある」と思います。年内一杯続くこの授業の今後の展開が楽しみです。

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「劣化フィルム映画祭」というのが世界に存在するかはわかりませんが、そんなものに興味を持つのは、僕のような行く先を見失いつつある人間の考えることでしょうか。でも、劣化したものも実は美しいんですよ。なにかしら愛しく思えてしまう。フィルム、映画、cinemaには相変わらず寛容です。
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by kantacantalavita | 2006-10-29 03:53 | 映画とは何か(cinemaについて) | Comments(0)
2006年 10月 28日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その12)

2006/10/14(8日目)

e0017332_22245954.jpg9:30- ノルディスク特集その12
 ・"FISKERLIV I NORDEN"/"VED HAVET"
  監督:Ole Olsen, デンマーク, 1909年
  35mm, 229m, 13' (16fps), did.: svedese
 ・"DE TO GULDGRAVERE"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1909年
  35mm, 174m, 10' (16fps), did.: spagnolo
 ・"KAMELIADAMEN"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1907年
  35mm, 254m, 12' (16fps), did.: svedese
e0017332_22251390.gif ・"RØVERENS BRUD"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1907年
  35mm, 215m, 11' (16fps), did.: danese
 ・"LØVEJAGTEN"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1908年
  35mm, 206m, 11' (16fps), did.: danese
 ・"BARNET SOM VELGØRER"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1909年
  35mm, 260m, 14' (16fps), did.: tedesco
 ・"EKSPEDITRICEN"
  監督:August Blom, デンマーク, 1911年
  35mm, 934m, 45' (16fps), did.: danese
【ひとこと】憶えているのは、シマウマ、カバ、ライオンなどが登場する"LØVEJAGTEN"と、ノルディスクのマーク(地球の上の白熊)がセットのあちこちにひそかに示されている"EKSPEDITRICEN"。前者はライオンの皮剥ぎシーンや召使とタバコをふかすシーンがある。後者の製作会社マークの暗示(暗示と言うにはあまりに露骨)は、フランスのパテに代表されるものだが、世界中の他の会社もやっているのかなあ。

14:00- インス特集その6
 ・"WAR ON THE PLAINS"
  監督:Thomas H. Ince, アメリカ, 1912年
  35mm, 1286ft, 19' (18fps), did.: inglese
 ・"THE BARGAIN"
  監督:Reginald Barker, アメリカ, 1914年
  35mm, 4649ft, 69' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】前者のフィルムの傷み具合、エマルジョンの溶解は美しくさえある。嘘の証言を映像で描く。後者、William S. Hartらの紹介ショット、観客にお辞儀をして頭を上げる登場人物に変わってる。ハートはすでに役者である、目つきの変わり具合が違う。

16:00- 映画の中の魔術
 ・"THE CABBY'S DREAM"
  監督:Charles Raymond?, イギリス, 1906年
  35mm, 135ft, 2'15'' (16fps), no did.
 ・"LES GLACES MERVEILLEUSES"
  監督:Segundo de Chomøn, フランス, 1907年
  35mm, 446ft, 7'30'' (16fps), no did.
 ・"MAGIE MODERNE"
  監督:不明, フランス, 1908年
  35mm, 387ft, 6'30'' (16fps), no did.
 ・"THE LAST PERFORMANCE"
  監督:Paul Fejos, アメリカ, 1929年
  35mm, 1578m, 57' (24fps), did.: ceco
【ひとこと】①小さな馬車から次々に人や動物や人形が出てくる、Cinema Ritrovatoですでに観ている。②オープニング・タイトルはドイツ語"Zauberspiegel"、pochoirという着色方法は来週授業でやるかしら。例のパテ・マーク(にわとり)が舞台の下に。③ガラス板とビンのマジック。④テクニックの進歩とその充実振りが見事。人の入った箱に剣を刺すマジック、抜いた剣は床に刺す、揺れる剣と仰角ショット、ディープ・フォーカスの長い食卓と画面奥へのトラベリング、客席上空から舞台までのカメラのトラベリング。こういうのが好きなら、ぜひ『笑う男』も観ろと映画祭で知り合った友人が教えてくれる。

17:15- グリフィス特集
 ・"THE GREAT FEATURE IN THE MAKING"
  監督:不明, アメリカ, 1920年
  35mm, 103ft, 1'30'' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】唯一残るグリフィスの監督風景。カメラに注目、撮影のみならずパンニングも手回しのレバーでやっている。こりゃ大変だ。

 ・"WAY DOWN EAST"
  監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1920年
  35mm, 11,100ft, 148' (20fps), did.: inglese
【ひとこと】日本のソフトで観たことがなかったのでよくわからないのだけれど、このフィルムはMoMAに保存されているものの上映プリントなのかしら。調べると色々なバージョンがあることがわかって、その中でも148分は最長で、失われた場面への字幕での言及があったりもしたが、そうした事情を考えると、シーンによってはずいぶん傷んでいるところもあるというのがうなずける。様々なところから見つかった様々な断片、あるいは数個のフォトグラムをつなぎ合わせたものなのでしょうね。昨年のボローニャ大学大学院の授業「映画の文献学Filologia del cinema」でやった映画修復の道徳(ここで要点を得た説明をする言葉を今の僕は持たない)のようなものが通用しない今回のようなケースもあるということ。チネテカで観た『メトロポリス』も、字幕や単フォトグラムで欠損部分を説明していたけれども、これはなかなかつらい。物語理解の役には立つが、映像作品としては完全に断ち切られている印象。
 相変わらず棒を持つリリアン・ギッシュ。死んだ子供に自分で洗礼を授ける。氷の上の救出劇。友人が教えてくれたリリアン・ギッシュの自伝を読みたい。

20:30- ジャン・ミトリ賞授賞式/シリー・シンフォニーズ/閉幕上映
 ・"THE OLD MILL"
  監督:Wilfred Jackson/Graham Heid, アメリカ, 1937年
  35mm, 784ft, 8'42'' (24fps), sonoro
【ひとこと】なかなか怖いぞ。子供のころには観たくない。アニメーションにおけるカメラの存在。

 ・"DIE AUSTERNPRINZESSIN"
  監督:Ernst Lubitsch, ドイツ, 1919年
【ひとこと】例によってチケット購入が遅れ、最前列最右翼の席。伴奏とルビッチ監督術を楽しんだが、いかんせん疲れた。僕の周りに座するイタリア人たちからは演奏に対して「作品への敬意が足りない、台無しにしている」と言う声が聞こえたが、それを言い出したらこの映画祭のミュージシャンたちは、時に映像からの集中が殺がれてしまうほどに、皆、素晴らしい演奏していたぞ。

22:30- イタリア特集
 ・"SOLE/LA REGINA DI MARECHIARO"
  監督:Giulio Antamoro, イタリア, 1919年
  35mm, 3280ft, 55' (16fps), did.: italiano
【ひとこと】両隣のイタリア人が笑っているのに、笑えないということ。特に右のおじさんは独りで何かブツブツ言っている、それほどまでに楽しんでいる。イタリア無声映画時代のスターLeda Gys。

おやすみサイレント
 ・"LA FÉE AUX PIGEONS"
  監督:Gaston Velle, フランス, 1906年
  35mm, 45m, 2' (18fps), no did.
【ひとこと】もうひとこともしゃべれない。おやすみポルデノーネ無声映画祭2006。
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by kantacantalavita | 2006-10-28 20:34 | 映画経験(filmについて) | Comments(2)
2006年 10月 27日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その11)

2006/10/13(7日目)

9:30- 映画の画面外 「ハンス・シュタインホフ」プロジェクト
 ・"INGE LARSEN"
  監督:Hans Steinhoff, ドイツ, 1923年
  35mm, 1746m, 85' (18fps), did.: tedesco
【ひとこと】突然映写が止まり、場内の灯りがつく、意味はわからんがすぐ回復。折々の海のインサート・ショットが良い。たくましいヒロイン、料理中の「下からライティング」、主人公インゲと男のキス・シーンに父と母のそれが割り込むモンタージュ。
 数年前に、UFAについての分厚い翻訳本が出てた。いずれ読みたい。興味深すぎる20年代のドイツ(イタリアもだけど、ん、当時の世界が面白いのか)。
 映画祭期間中、一番前の席に座り続けた僕の隣には、ほとんどの場合あるお年寄りが座っていて、この上映の前に初めて言葉を交わす(当ブログの映画祭写真集の何番目かに僕と彼のツー・ショットがあります、意図的ではありません)。なんとなくイギリス人かなあと思っていたがその実どうか知らん、ただ上映中ほとんど寝ているにもかかわらず、付き添い(が必要なくらいにお年寄り)の人がやって来るたびに、「楽しいんでるよ、今のは最高だ。」なんて言ってる姿が何かしら心惹かれるところがあって、実際に、ああ今寝たな、と思った次の瞬間にはスクリーンの光で目をきらきら輝かせている、そんなおじいさんで、この上映の前に話す機会があって、まあ彼がほとんど一方的に話していたのだけれど、ジョン・フォードが好きだとか、『裁かるゝジャンヌ』が好きだったり、色んなことを話してくれた、哀しいかな、彼の言葉は日本人の僕が理解できるほどには明瞭ではなく、僕の英語はそれに答えるには十分ではなかった。彼と挨拶を交わす人の多さ、その人々の面々から、彼は昔どこかのアーカイヴで働いていた人かなあとも想像していたが、結局わからず終いで、唯一名前はDavidということだけ知っている。最終日、(彼にとっての)最後の上映が終わって立ち去り際に「また来年な。」と言ってくれたのを憶えている。「ええ、また来年。」と僕も返す、来年は来ないなどと誰が言えよう、で彼はまた一言付け加えたが聞き取れたのは"survive"という単語だけで、想像力をかき立てるには十分すぎるほどに強い単語なわけで、真意は知らん「生きてたらな。」とかそういうことだったのかしら。ああ、じいちゃん、俺はもっと話を聞いていたいんだよ。
 
11:00- ノルディスクその10
 ・"NEDBRUDTE NERVER"
  監督:A. W. Sandberg, デンマーク, 1923年
  35mm, 1700m, 74' (20fps), did.: danese/inglese
 ・"DON JUANS OVERMAND"
  監督:Lau Lauritzen Sr., デンマーク, 1916年
  35mm, 362m, 20' (16fps), did.: tedesco
【ひとこと】オリジナル可燃性(これまでナイトレートと書いてきた)フィルムからのデジタル修復の前者。染色。字幕がややわずらわしかったが、映像で十分魅せる。犯罪を目の当たりにし、電話をするがつながらない、「つながったらそこで映画は終わる」という字幕。盗み聞きをする主人公、ガラスにびったり耳をつけた彼をガラス越しに捉える驚愕のショット。夢の描写、女、ピストル、ナイフ、雲。机の上の人形がコマ撮りで動き出す。2本目は開始後すぐに寝てしまう。眠りを妨げるのは季節外れの蚊のみ。

12:35- 映画の画面外
 ・"A MOVIE TRIP THROUGH FILMLAND"
  監督:Paul Felton, アメリカ, 1921年
  35mm, 1914ft, 23' (22fps), did.: inglese
【ひとこと】Cinema Ritrovatoでも観た「ナイトレート・フィルムができるまで」を描いた教育映画。冒頭、映画に関する国際会議(アニメーション)で中国人が話すも言葉が通じず、そこで「映画という共通言語!!」となるくだりはとても良い。字幕による説明ももちろんあるが、肝心なのは映像である。(映画保存について学びたい者としては)恥ずかしながら、このフィルムに教わることは多い。正確な数字をメモするよう努めたが果たせず、カタログから引用、「1921年コダック・パークでは、147,000マイルのフィルムが製造されました。綿花のかたまりの到着から始まるフィルム製造の過程を、この作品はひとつひとつ紹介していきます。4,000,000ポンドの綿と3トンの純銀と12,000,000ガロンの水が必要です。」最後はニューヨークから伸びたフィルムが世界中を結ぶ。その撮影現場もしっかり映すらへんが、教育映画として秀逸である。ジョージ・イーストマン・ハウスとイーストマン・コダック・カンパニーの共同修復で、GEHに保存されていた2本の劣化フィルムが素材。

14:30- インス特集その5
 ・"THE DREAM"
  監督:Thomas H. Ince, アメリカ, 1911年
  35mm, 735ft, 11' (18fps), did.: inglese
 ・"CIVILIZATION"
  監督:Raymond B. West, アメリカ, 1916年
  35mm, 5796ft, 96' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】前者、酔って眠る男の夢、皿や帽子を蹴り上げる妻。後者、大作だが、僕の集中力が足りず十分には楽しめず。ノートに残る血痕は上映中にかさぶたをいじっている注意散漫な自分の証明。戦場に現れるキリストのオーバーラップといった断片的な記憶。今になってひどく残念。

16:10- ノルディスク特集その11
 ・"PRÆSTEN I VEJLBY"
  監督:August Blom, デンマーク, 1922年
  35mm, 1525m, 67' (20fps), did.: danese
【ひとこと】染色フィルムの使用、夕刻の処刑シーンの赤、消えるろうそくは黄から青、充分なコントラスト。カタログによれば、戦前戦中の盛り上がりに対し、戦後市場を失ったノルディスクは、対照的に景気の良いスウェーデン映画(ショーストロムか)を手本とし、自国の伝統や歴史をテーマに取り上げ、同時にロケーション撮影や染色フィルムの使用という手法を獲得した。染色フィルムとコントラストの関係を先日授業で触れたので言及しておくと、フィルムのベース、あるいは乳剤に色をつける「染色(日本語はあってるのか知らん、英語のtinted、イタリア語のimbibito)」は、調色(toned, virato)とは異なりハイライトで最も効果的に発色するので、フォトグラム内のコントラストが重要なんだとか。映画祭と授業がリンクして楽しき日々。
 (5日目からの修正、じゃああのメモはなんだ、「誰か叫ぶ」。)叫ぶ人がいる。上映開始後に入場して足元が見えなかったのか、転倒してしまった年配のイタリア人男性のようだ。特定はしていないが、叫びぶりからそのヒトトナリを想像し、なんとなく誰だったか見当がついたのが可笑しい。長丁場のこの映画祭、なんとなくお互い顔見知りになったり、いるだけで目立ってしまう人、存在感のある人というのが出てくるものだ。

17:00- ヴィデオ&シネマ
【ひとこと】デジタル編集の座談会、あるいはワークショップ。僕自身はその場に居合わせなかったし、元来守備範囲ではないためよくわからないけれども、参加した友人は編集ソフト「ファイナルカット」の話などを楽しんだようだ。デジタルとかPCとかMacとか、無縁では居たくない(居られない)ものはたくさんあるのです。

17:15- 映画の画面外/映画スター
 ・"THE JEST"
  監督:Fred Paul, イギリス, 1921年
  35mm, 851ft, 12' (20fps), did.: inglese
 ・"THE LAST APPEAL"
  監督:Fred Paul, イギリス, 1921年
  35mm, 935ft, 13' (20fps), did.: inglese
【ひとこと】妻に逃げられた男が彼女を探し続けたのは、復習のためだった。食卓に姿を現す妻をオーバーラップで描写。後者に関しては全く記憶がないが、ノートによれば、フィルムの傷みがひどかったらしい。(この「ひとこと」が何よりひどい。)

 ・"A DREAM OR TWO AGO"
  監督:James Kirkwood, アメリカ, 1916年
  35mm, 1051m, 51' (18fps), did.:olandese
【ひとこと】ノートに「女優かわいい」とある。Mary Miles Minterを憶えておこう。乳剤が完全に溶けてしまってるシークエンスあり。道端でのロケは、浮浪者を含む一般人がエキストラとして起用されているように見える(みんなカメラを見てる)。上映中にくしゃみをした隣の女の子にさらに隣に座るその連れとは思えない男性が「お大事に Salute」、女の子は答えて「ありがとう Grazie」と言う国。
 この作品の修復にも用いられた「デズメ方式 il metodo Desmet/the Desmet method」は来週講義でやる(はず)、その後で当ブログで言及を予定、資料(あの燃えそうに赤い本)は先日届いた。

20:00- イタリア特集
 ・"CABIRIA"
  監督:Giovanni Pastrone, イタリア, 1931年
  35mm, 3132m, 136' (20fps), sonoro, did.: inglese
【ひとこと】キーボードの打ち間違えではない。『カビリア』のサウンド版というのが世の中には存在したのだ。しかも専用に作られた音楽に合わせて、パストローネ自身が編集した作品である。詳しくは未確認だが、今回のプリントは染色に使われた色も違うとか。上映前のスピーチではモロック神殿の場面が幾分長いと言ったと思ったが、実際にはショット単位でなくなっているものもある、掲げられるカビリア。崩れる宮殿の柱(の音)、カルタゴの僧侶の祈り(の声)。サウンド版のfpsと今回の修復で用いたプリントのそれが違うため、そのシンクロに苦労したとか、その現れとしての長い黒画面。サウンド・トラックは効果音だけではなく前記の祈り(歌声)やマチステに放り投げられる兵士の叫びなどのように人声も録音されている、にもかかわらず音声が台詞に全面的に用いられなかったということはどういうことか。画面サイズに変化はないのか。場面によって人物の動きのスピード(コマの速さ?)に差がある。もっと詳しく知りたい。

22:30- 映画の中の魔術
 ・"L'HOMME MYSÉTRIEUX"
  監督:不明, フランス, 1910年
  35mm, 329ft, 5'20'' (16fps), no did.
 ・"THE MEDIUM EXPOSED?"
  監督:J. H. Martin, イギリス, 1906年
  35mm, 363ft, 6' (16fps), no did.
 ・"THE SHOW"
  監督:Tod Browning, アメリカ, 1927年
  35mm, 6227ft, 68' (24fps), did.: inglese
【ひとこと】動く映像である限りにおいては映画的と言える「関節はずし人間」の1本目。マジックのインチキがばれて楽しい2本目はCinema Ritrovatoで既観。サロメをもモチーフにした手品の3本目、盆の上の顔のトリックは結局仕掛けがわからず。
 相変わらず2列目でシャッターを切り続ける人に腹を立てた(と思しき)1列目の男性が耳栓をする。

おやすみサイレント
 ・"LA COURSE À LA PERRUQUE"
  監督:Georges Hatot, フランス, 1906年
  35mm, 117m, 5'30'' (18fps), no did.
【ひとこと】風船に結び付けられたカツラと、それを追う持ち主である女性。建設間もないエッフェル塔が映る。ボローニャにて既観。
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by kantacantalavita | 2006-10-27 20:24 | 映画経験(filmについて) | Comments(2)
2006年 10月 27日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その10)

2006/10/12(6日目)

9:30- 映画の中の魔術その3
 ・"LES DÉS MAGIQUES"
  監督:Seguendo de Chomón, フランス, 1908年
  35mm, 445ft, 7'30'' (16fps), no did.
 ・"MÉTAMORPHOSES DU PAPILLON"
  監督:Gaston Velle, フランス, 1904年
  35mm, 106ft, 2'45'' (16fps), no did.
 ・"YOU NEVER KNOW WOMEN"
  監督:William A. Wellman, アメリカ, 1926年
  35mm, 5893ft, 71' (22fps), did.: inglese
【ひとこと】サイコロのマジック。幼虫が女性扮する蝶々に変身、のけぞった胸が蝶の頭になる、Cinema Ritrovatoで既観。3本目の長編は、いろんなマジックが見れてそれだけで純粋に楽しい、ナイフ投げ、空飛ぶ女、消える女・・・。曲芸を演じている男の股から奥で抱き合う男女が見えるショット、影やトリックの使い方が効果的。Fosterの決め台詞が良かったが正確な文章を忘れたので割愛。

11:00- ノルディスクその8
 ・"EN KUNSTNERS GENNEMBRUD"
  監督:Holger-Madsen, デンマーク, 1919年
  35mm, 938m, 45' (18fps), did.: tedesco
 ・"EVANGELIEMANDENS LIV"
  監督:Holger-Madsen, デンマーク, 1915年
  35mm, 1093m, 51' (18fps), did.: danese/inglese
【ひとこと】前者は「言葉(字幕)」をもっと理解したかった。バイオリンという小道具。オーストリア・フィルム・アーカイブのナイトレート・ポジから2001年に修復。後者は保存用マスターからのデジタル修復。影を使ったショットを好む我が傾向(グリフィスの『チート』にもあったっけ??)。伴奏は京都映画祭でも知られるブッフバルトで、ピアノとバイオリンを駆使した実験的な演奏が印象的。特筆すべきは、後者の異なる3つのエンディング/ヴァージョン違い、ドイツ版(デンマーク版?)は首を吊ろうとするが間一髪助けられる女、ロシア版は吊って死ぬ女、スウェーデン版は首を吊るも何とか助かる女。

14:30- シリー・シンフォニーズ/映画の画面外
 ・"THE UGLY DUCKLING"
  監督:Wilfred Jackson, アメリカ, 1931年
  35mm, 618ft, 6'52'' (24fps), sonoro
 ・"THE UGLY DUCKLING"
  監督:Jack Cutting/Ham luske, アメリカ, 1939年
  35mm, 807ft, 8'58'' (24fps), sonoro
【ひとこと】みにくいアヒルの子。

 ・"DIE BIENE MAJA UND IHRE ABENTEUER"
  監督:Wolfram Junghnans, ドイツ, 1926年
  35mm, 1754m, 76' (20fps), did.: tedesco
【ひとこと】ヘルシンキのアーカイヴで保存されていた染色ナイトレート(フィンランド語とスウェーデン語の2カ国語版)を、ベルリンのブンデス・フィルム・アーカイヴBundesarchiv-Filamrchivとワルデルマル・ボンゼルス財団Waldemar Bonsels-Stiftungが修復。ドイツ語版字幕は検閲カードから再構成。ミツバチ「マーヤ」の物語。上記ボンゼルスは『みつばちマーヤの冒険』の作者。科学映画的ドキュメンタリー映画的物語映画。蜂の巣の幾何学模様。超近接撮影。スズメバチの来襲で伴奏は大太鼓を叩く、最前列の子供が泣き出す。カタログのキャストの項には、「ミツバチ、ウサギ、ハリネズミ、バッタ、フクロウ、ツグミ、チューリップ、トンボ、バラ、アリ、カエル、コガネムシ、カブトムシ、ミミズ、クモ、チョウチョウ、妖精(?)、スズメバチ、ホタル」がクレジットされている。もう一度みたい、字幕を理解しながら、上映前にワインを飲まず。

16:00- インス特集その4
 ・"THE DESERTER"
  監督:Thomas H. Ince, アメリカ, 1912年
  35mm, 804ft, 12' (18fps), did.: inglese
 ・"HAIL THE WOMAN"
  監督:John Griffith Wray, アメリカ, 1921年
  35mm, 7073ft, 94' (20fps), did.: inglese
【ひとこと】前者は2日目のインス1と入れ替え、2巻モノの後半のみが残されていた、染色ナイトレート・ポジからの修復版、とは言えグラデーションがつぶれ、画がにじむ。これだけまとめて古い映画を見ていると、劣化の仕方も様々なことに気づく。後者、椅子に女を座らせてそのまま水に沈める刑、で突然300年後、女性の権利・名誉の獲得、サンタクロースのアニメーション合成、女性同士が抱き合うバスト・ショットはその希少さからかとても良い、よくは内容を理解していないにもかかわらず泣きそう(泣かない)になることもあるのだ。

17:45- ノルディスクその9
 ・"FLUGTEN FRA SERAILLET"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1907年
  35mm, 182m, 9' (16fps), did.:danese
 ・"BEDRAGET I DØDEN"
  監督:Eduard Schnedler-Sørensen, デンマーク, 1911年
  35mm, 858m, 41' (16fps), did.: danese
 ・"MAHARADJAHENS YNDLINGSHUSTRU"
  監督:Robert Dinesen, デンマーク, 1917年
  35mm, 1475m, 72' (18fps)
【ひとこと】東洋モノ3本。カタログによれば、こうしたエキゾチックな作品群が後年ノルディスクの評判を世界市場で高いものにするとか。すなわち、その映っている像としての映像がそれ自体で魅力的ということか。現代の東洋人の目で見てしまったのか、消化悪い。3本目の終幕直前、2度物語とは関係のなさそうなフォトグラムが数コマ単位で挿入されている。まさかサブリミナルとかではないだろうから、正体を知りたい。

20:30- シリー・シンフォニーズ/ルイーズ・ブルックス生誕100年
 ・"MERBABIES"
  監督:Rudolf Ising, アメリカ, 1938年
  35mm, 771ft, 8'34'' (24fps), sonoro
 ・"MUSIC LAND"
  監督:Wilfred Jackson, アメリカ, 1935年
  35mm, 851ft, 9'27'' (24fps), sonoro
【ひとこと】海底のパレードが面白い1本目。2本目はシンフォニーの国の姫とジャズの国の王子の物語、戦争の描き方、楽器が一転して武器に。

 ・"PRIX DE BEAUTÉ"
  監督:Augusto Genina, フランス, 1930年
  35mm, 2900m, 108' (23fps), did.: italiano
【ひとこと】ルイーズ・ブルックス発見という我が映画史上の大きな出来事。いきなりの水着シーンで感電(あるいは感染)する。上映中、心の中では「ピンボケ最高、ピンボケ最高・・・」と繰り返す。スープを飲むときなどの伏目がちのショットでのピンボケには実際に歓声までも出る。ミス・ヨーロッパのコンテストは実際の映像か、人人人人人・・・、映像として残る撮影機の小型化、列車内での手持ちカメラ(暗いし近いからピントはどうしてもずれる)、脚ばかり追うカメラマン、ミス・コンの後のダンス・パーティ、記念撮影での笑ってない顔、とらえるべき人物を中心からずらしたショット、カメラ・チェックの上映室での表情、笑って良し怒って良しの1m65cm54kg。今月末にはパブストの『パンドラの箱』をチネテカでやる。何度でも観に行く。

22:30- グリフィス特集
 ・"THE IFOL DANCER"
  監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1920年
  35mm, 6818ft, 91' (20fps), did.: inglese
【ひとこと】南海もの。Clarine Seymour再び。ピアノの中に手を入れ、弦(?)を直接指ではじく演奏法がすごいなと思ったらブッフバルトで、寒く眠い中でのハイライトは彼の演奏だった。

おやすみサイレント
 ・"LÈVRES COLLÉES"
  監督:不明, フランス, 1906年
  35mm, 46m, 2' (18fps), no did
【ひとこと】のりおばさんがまたやってきた。Cinema Ritrovatoではずいぶん楽しませていただいた。どうせならヴァージョン違いもやってくれよ。
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by kantacantalavita | 2006-10-27 06:58 | 映画経験(filmについて) | Comments(0)
2006年 10月 25日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その9)

2006/10/11(5日目)

9:30- グリフィス特集
 ・"THE LOVE FLOWER"
  監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1920年
  35mm, 7022ft., 94' (20fps), did.: inglese
【ひとこと】水中撮影による映像の最も古い体験としてジャン・ヴィゴ監督『水泳選手ジャン・タリス('31?)』を記憶していたが、あっさりと新記録。同『アタラント号』とよく似た、水槽の中のようなショット。ずいぶん滑らかになったパンニング。夫が出発した後の、妻の逢瀬/夫と女、という並行モンタージュと、相変わらずの2度繰り返しアクションつなぎ。果たしてマッチカットって言うんでしたっけ??ヒヤシンスだらけの船。

11:15- ノルディスクその6
 ・"HIMMELSKIBET"
  監督:Holger-Madsen, デンマーク, 1918年
  35mm, 1700m., 83' (18fps), did.: danese/inglese
【ひとこと】保存版マスター35mmとカメラ・ネガから2006年にデジタル修復。学会で発表する場面では、画面内でさらに映像が使われる。朝日の中で作業しているショットの美しさ。火星で披露された踊りと下からのライティング。カタログによれば、当作品のテーマの理想主義的な思想は、公開の一ヵ月後にコペンハーゲンで初上映された『國民の創生('15)』に比して、その「くだらなさ」が酷評されたとある。が、そういう背景を無視して、出発、地上の飛行撮影、特撮による宇宙、火星の描写はなかなか良い。火星の裁判所のセット、エキストラの数が多いロングショットもとてもきれいだ。白黒映画で白粉をしないと、役者の顔はあれほどまでに黒く映るのか。

12:45- 映画の画面外
 ・"A LIVELY AFFAIR"
  監督:不明, アメリカ, 1912年頃
  35mm, 490ft., 7' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】謎多きフィルムとか。まずタイトルが不明で、"A LIVELY AFFAIR"は字幕から付けられたものらしい。クレジットの欠損を除けばそれ以外は揃っていると推察される。「女性参政権に関する会合」と題された集まりで夫人たちはカードゲームに興じ、酒・タバコを嗜み、会に参加するため自転車を盗み、子供と夫を家に残す。果ては収監され、それに喜ぶ夫たち。カタログの文面上で読者に情報を求めるほどに謎多き作品。

14:30- 映画の揺籃期
【ひとこと】勝手に特集の名前をつけたのではなく、イタリア語では"INCUNABULA"なのです。映画誕生直後のフィルム特集。ジョージ・ウィリアムス・コレクションGeorge Williams Family Collectionより、7本がイギリスで撮影されたもの(ほとんどがBirt Acres監督)、6本はアメリカにてエジソン・マニュファクチャリング・カンパニーEdison Manufacturing Companyによって撮られたもの、さらにこれらに、1997年の本映画祭では「失われている」とされたエジソンの3作品が加えられる。いずれも短い断片であるため、長さに応じて2度3度と繰り返して上映されました。美女と野獣(劣化強)、首も切れてしまうほどに大きな剃刀、スリの逮捕劇、カンガルーのボクシング、犬のセルペンティーヌ・ダンス、小舟とずっこけ喜劇、圧倒的なナイアガラの滝。
 上映中一時中断し、大野裕之さんとイギリス人男性(上記プログラムの点検に携わったLuke McKernan教授だと思っていたが未確認)にメダルの授与。

15:45- 映画の画面外/映画スター
 ・"LOST AND FOUND ON A SOUTH SEA ISLAND"
  監督:Raoul Walsh, アメリカ, 1923年
  35mm, 145m., 6' (22fps), did.: italiano
【ひとこと】オリジナルは6333ft.、2000mちょっとか。失われた部分の多さ。ラオール・ウォルシュの、イタリアで公開された最初の作品の断片。
 
 ・"POOR JAKE'S DEMISE"
  監督:Allen Curtis, アメリカ, 1913年
  35mm, 150m., 7' (18fps), did.: inglese
 ・"MOCKERY"
  監督:Benjamin Christensen, アメリカ, 1927年
  35mm, 5828ft., 74' (21fps), did.: inglese
【ひとこと】このプログラムを楽しむにはロン・チェイニーについて知らなさ過ぎる。ノートには、「無能警官×3、逃げるソーセージ」とだけある。後者ではSergeiという男に助けられる女性がいて、その女優がずいぶんと無声映画らしくない顔つき/メイクだったのを、今、思い出す。Barbara Bedfordか。

17:15- ノルディスクその7
 ・"KRIGSBILLEDER"
  監督:不明, デンマーク, 1914年
  35mm, 700m, 38' (16fps), no did
【ひとこと】第一次大戦のドキュメンタリー映像。焼かれた町、崩れた橋、時計塔の文字盤、兵隊の行進、食事する兵士。"restauration"という看板。パンニングの連続。
 
 ・"VERDENS UNDERGANG"
  監督:August Blom, デンマーク, 1916年
  35mm, 1525m, 74' (18fps), did.: danese/inglese
【ひとこと】2005年、マスター・ポジからデジタル修復したプリント。キュー・マークが出ずに映写技師さんが困ってる様子。午前中のノルディスクその6と似通った小道具、セット(天文台)、真下からのライティング。 運命を別ける姉妹。段々近づく彗星の、「絵に描いた」ような描き方に比べ、彗星衝突とその後の地上の描写は見事で、火(花火?)と煙とジオラマと、オーバーラップなどの特撮が効果的。火山の噴火や荒れた海、焼き払われた町(1本目を思わせる)など実際の映像も取り込まれている。沈んだ家のシーンはどうしたものか、小舟での救出でずっこけそうな男。世界に残された2人が、教会の鐘でめぐり合う奇跡。

20:30- シリー・シンフォニーズ/ミュージック・イベント
 ・"BIRDS IN THE SPRING"
  監督:Dave Hand, アメリカ, 1933年
  35mm, 653ft, 7'15'' (24fps), sonoro
 ・"WATER BABIES"
  監督:Wilfred Jackson, アメリカ, 1935年
  35mm, 760ft, 8'27'' (24fps), sonoro
【ひとこと】後者は子供の人魚で、人魚なのにお尻がある。お尻があったらいけないことはないが幾分奇異に映る。テクニカラー以前のカラー映画史をやるなら、テクニカラーのことも当然知っておかなくてはならん。

 ・"BATTLE OF THE SOMME", イギリス, 1916年
  35mm, 4694ft, 79' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】上映前のスピーチがとても長い。原稿もなしでよくもまあ喋れたものだと感心する。日本語でも絶対僕にはできない。それはさておき、こういうフィルムがきちんと残っていて、しかも局地的とは言え世界的な場で上映されるということ。日本にはこういったフィルムがどれくらい残っているのか知らん。初めて戦車が使われた戦いをフィルムは克明に記録する。武器の様子、兵士の様子、戦いの様子。他ならぬドキュメンタリーである。プロパガンダ映画、戦意高揚映画、戦時ドキュメンタリー映画を、今観るということ。死体も何も隠さない。伴奏でアレンジされた君が代が聞こえる。

22:30- 映画の画面外
 ・"THE STORY OF THE KELLY GANG"
  監督:Charles Tait, オーストラリア, 1906年
  35mm, 578ft, 9' (18fps), did.: inglese
 ・"THE BUSH CINDERELLA"
  監督:Rudall Hayward, ニュージーランド, 1928年
  35mm, 5679ft, 84' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】前者のオリジナルの長さは4000ftに及ぶらしい。残された部分は限られており、しかも傷みもひどい。後者はキーウィーが出てくるところなんかずいぶんニュージーランドらしいじゃないか。これはすでに感想ですらない。

おやすみサイレント
 ・"BAIGNADE INTERDITE"
  監督:不明, フランス, 1903年
  35mm, 24m, 1' (18fps), no did.
 ・"BADEN VERBOTEN"
  監督:不明, オーストリア, 1906年
  35mm, 29m, 2' (18fps), no did.
【ひとこと】水浴びする3人娘。カメラの存在がとても良い。おやすみ。
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by kantacantalavita | 2006-10-25 19:48 | 映画経験(filmについて) | Comments(2)
2006年 10月 23日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その8)

2006/10/10(4日目)

9:30- インスその3
 ・"THE LAST OF THE LINE"
  監督:Jay Hunt, アメリカ, 1914年
  35mm, 1827ft., 27' (18fps), did.: inglese
 ・"THE TYPHOON"
  監督:Reginald Baker, アメリカ, 1914年
  35mm, 3770ft., 56' (18fps), did.:inglese
【ひとこと】早川雪洲主演作2本。前者は日本人俳優HAYAKAWAがインディアンの酋長の息子役で、後者ではパリの日本人外交官役。後者における登場人物紹介ショットで、画面外を意識した彼の演技と演出が気に入る、「インス」、「會社」の日本語、きちんとした小道具と洋服の上に羽織る和服、アメリカ人女性の下半身に顔を寄せるTOKORAMOが良い。

11:00- ノルディスクその4
 ・『サタンの書の数ページ』 "BLADE AF SATANS BOG"
  監督:Carl Th. Dreyer, デンマーク, 1920年
  35mm, 2900m.,158' (16fps), did.: danese
【ひとこと】4つの挿話からなるこの映画を「ひとこと」で語るのは難しいが、字幕にも同時通訳にも頼ることなく、映像によって自らの想像力を逞しくして作品の理解に近づけた(作品の十全な理解など言葉がわかってもできるものではないんじゃないか知らん)という意味で、ひとこと「素晴らしい」。『裁かるゝジャンヌ』を溯る7年前にすでに、どきっとするようなクローズアップやストップ・モーションかと思えるほどに動かない俳優演出など、後のドライヤー(「後のドライヤー」を語るにはあまりにさびしい我が鑑賞フィルモグラフィ)の萌芽は随所に見られる。フレーミング一発の短いショットの連続がとても良い。悪魔も悩む、シンパシー・フォー・ザ・デヴィル。

14:30- グリフィスその10
 ・『悪魔絶滅の日』 "SCARLET DAYS" 
  監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1919年
  35mm, 5708ft., 85' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】「真実は虚構よりも奇なり」。映画が好き過ぎて、好きで好きで堪らなくて、それゆえ必死にメモを取ろうとするあまりペンライトを使って周りの客に迷惑をかけたり、レコーダーに自らの声を吹き込んだり、ことあるごとにスクリーンに向けて豪快にシャッターを切ったり、さすが変人の集まるところではある。僕もメモは取りますが、スクリーンの明かりを頼りにしてます。
 例によってこの作品でも未熟(あるいは故意か)なアクションつなぎ。Clarine Seymour演じるFlameheartが走り回り、ヤギになる、頭突きを食らわす。我が身を犠牲にして女を救うタフガイ、事情を汲んでやる老役人、終には想いの届く女。こういう「はっぴいえんど」も大好きです。

16:00- イタリア特集
 ・"MACISTE"
  監督:Vincenzo Denizot/Luigi Romano Borgnetto, イタリア, 1915年
  35mm, 1377m., 67' (18fps), did.: italiano
【ひとこと】オリジナルは1968m.だが、今回の修復版プリントは1372m.。この作品の製作会社でもあるItala Filmの撮影所を垣間見ることができる。バルトロメーオ・パガーノBartolomeo Pagano演じるマチステにはCinema Ritrovato以来、興味を持っている。何よりも彼によるトリックではない力技の映像がすごく好きになる。木を引っこ抜いたり、犬を鷲づかみにしたり、机を口で持ち上げたり、「筋肉番付」的に2枚の壁間を伝ったり。それでいて走り方や椅子の座り方といったちょっとしたしぐさはとてもコミカルである。近々何か書こう。

17:45- 特別イベント
 ・"THE BIG PARADE" 『ビッグ・パレード』
  監督:King Vidor, アメリカ, 1925年
  35mm, 11,232ft., 143' (20fps), did.: inglese
【ひとこと】染色のオリジナル・ネガとデュープ・ネガ(ともナイトレート)をデズメDesmet方式で2004年に修復したプリント。(言葉遣い・用語の使い方が間違っていたら誰か指摘してください)。今回の映画祭で、少なくとも僕が見た限りでは最も観客の拍手を集めた作品。フランスの一村でののどかな前半から、兵隊の出発、戦闘シーンと、いずれを取っても見ごたえあった。特に好きなのは歩き出した兵士たちの中に男の姿を探す女の場面、密な画。長靴の片方を投げる男も良い(象徴的に結末へとつながる)。林の中を進む隊列、爆発をオーバーラップさせた戦闘シーン。演奏家にも惜しみない賛辞(としてのスタンディング・オベーション)。

20:30- ミュージック・イベント/ノルディスクその5
 ・"KLOVNEN"
  監督:A. W. Sandberg, デンマーク, 1926年
  35mm, 2700m., 128' (20fps), did.:inglese/danese
【ひとこと】早川雪洲、カール・Th・ドライヤー、D・W・グリフィス、マチステ、キング・ヴィダーと濃密すぎたプログラムの後。前半をすっかり眠ってしまう。でも待て。結構良いぞ、この作品も、と起き出してからは楽しんだことは憶えている。メモを取っていなかったので、ピエロのメイクやら、窓の外の夜景とか、今思い出せるのはそういう写真的な要素ばかり。ピエロ(を演じる男)が成功した後の盛況振りとその舞台。ああ、映画祭委員長が言ってました、「この映画祭の観客は『作品を選ぶ』ということを知らない!!」と。いえいえ、選べませんよ。

22:45- 映画の画面外/映画スター
 ・"BRONCHO BILLY'S ADVENTURE"
  監督:Gilbert M. "Broncho Billy" Anderson, アメリカ, 1911年
  35mm, 961ft., 19' (16fps), did.: inglese
 ・"(THE BOTTOM OF THE SEA)"
  監督:不明, アメリカ, 1914年
  35mm, 36ft., 1'30'' (16fps), did.: inglese
【ひとこと】前者は、オランダはハーゲ・フィルムとアメリカはセルズニック・スクールの共同プロジェクト。素晴らしいプロジェクトだが、大方寝る。メモには「早撃ちコマ撮りで字を、STAY CLEAR」とあり、このシーンは何とか思い出すことができたが。後者はアニメーション。通常の白い背景黒い線ではなく黒い背景白い線だったか。メモに「16mm→35mm」とあるのは字面からはフィルムのブローアップを思わせるが、カタログにはそうした言及はない。オリジナルは600フィート。

 ・"OUT YONDER"
  監督:Ralph Ince, アメリカ, 1919年
  35mm, 1166m., 56' (16fps), did.: olandese
【ひとこと】画を見ながら映画を観ず。違うこと(撮りたい映像、やりたい仕事)ばかりを考える。そんな集中力のない状況でも「暗闇の光とけむり」という言葉を残している。

おやすみサイレント
 ・"LA FÊTE À JOSÉPHINE"
  監督:Georges Hatot, フランス, 1906年
  35mm, 91m., 4'30'' (18fps), no did
【ひとこと】植木を買って帰るはずが、途中で呑んだくれてしまう話。半端でない呑みっぷり。この日の圧倒的なプログラムたちにフラフラになっているが、また明日も楽しみだと思わせてくれる。
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by kantacantalavita | 2006-10-23 20:36 | 映画経験(filmについて) | Comments(2)
2006年 10月 23日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その7)

2006/10/09(3日目)

9:30- グリフィス特集
 ・"THE GREAT QUESTION"
  監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1919年
  35mm, 5449ft., 81' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】流れる川というモチーフ。エインディングでの幸と不幸の並行モンタージュ。長兄の死のエピソード、潜る潜水艦と入艦に間に合わない兄、死んで帰宅、墓に現れる兄のオーバーラップ。同じ動きをショットを替えて撮る不完全なアクションつなぎ(他作品でも登場)。モップ(粉挽き?)を持つリリアン・ギッシュの手。石油が出る突拍子の無さとベタベタな終幕がとても良い。

11:00- ノルディスクその2
 ・"DEN HVIDE SLAVINDE"
  監督:Viggo Larsen, デンマーク, 1907年
  35mm, 150m., 8' (16fps), did.: danese
 ・"DEN HVIDE SLAVEHANDEL"
  監督:August Blom, デンマーク, 1910年
  35mm, 586m., 32' (16fps), did.: danese
 ・"DEN HVIDE SLAVEHANDELS SIDSTE OFFER"
  監督:August Blom, デンマーク, 1911年
  35mm, 868m., 47' (16fps), did.: inglese/danese
 ・"SHANGHAI'ET!"
  監督:Eduard Schnedler-Sorensen, デンマーク, 1912年
  35mm, 780m., 42' (16fps), did.: danese
【ひとこと】上の3作品は白人奴隷を題材にした物語なのだけれども、それは終映後に知る。すでに触れたように同時通訳を使わなかったために、またデンマーク語字幕からの予想(フランス語、スペイン語はイタリア語をフル活用すれば当たらずも遠からじ、な気がしている)さえもできかったので、「なんとデンマークは拉致の多い国なんだろう、それでいてデンマーク人は呑んでばかりじゃないか」などと、プログラミングの意図も作品の描かんとすることもうっちゃって楽しんでいた。電話で話す2人をフレームの左右に据え、両人の間で会話の内容を描く技にうなる。特に3本目はきれいな染色(イタリア語ではimbibito、英語はtinted)フィルム。4本ともほとんど変わらぬ語り口、モチーフ、人物設定だが、重要なのはそこではなく、1910年代初頭のデンマーク映画の長尺化が、イタリアのそれに少なからぬ影響を与えていることを思い出す。参考のため昨年の授業ノート(12月14日)を開くとしっかりAugust BlomやNordiskの文字が記され、「Danimarca: 700mt.-1000mt.(デンマーク:700メートルから1000メートル)」、「ジャンルとしてのmelodramma erotico(エロチックなメロドラマ)」、「si baciano lungamente dentro la città(人々が街中で長々とキスをする)」などと書いている。

14:30- イタリア特集
 ・"MACISTE INNAMORATO"
  監督:Luigi Romano Borgnetto, イタリア, 1919年
  35mm, 2000m., 96' (18fps), did.: italiano
【ひとこと】期待の「マチステ」もの。マチステを演じるマチステ役のマチステ。映画内映画。マチステの手を大きく見せるためのトリック。鼻を噛むマチステ。字幕がわかる喜び、"Altrimenti ti schiaccio!!(さもないとぶっ潰すぞ!!)"、"Del tempo c'è ne da vendere.(時間なら売るほどありますんで)"。井戸からの脱出、底からの仰角ショット。去るマチステ、押し花、ほろ苦エンディング。

16:15- インス特集その2
 ・"THE LIEUTENANT'S LAST FIGHT"
  監督:Thomas H. Ince, アメリカ, 1919年
  35mm, 1700ft., 25' (18fps), did.: olandese
 ・"BRANDING BROADWAY"
  監督:William S. Hart, アメリカ, 1918年
  35mm, 4374ft., 53' (22fps), did.: inglese
【ひとこと】インディアンもの、南北戦争ものには今映画祭ずいぶん苦労する。台詞で笑わせる西部劇。決め台詞とかは要らないので、決めモンタージュには時代的にまだ早いだろうから、決めフレーミングなどで喜んでいたい。ロングショットによる、疾走する馬の追跡シーンは良い。

20:30- シリー・シンフォニーズ/ミュージック・イベント
 ・"BIRDS OF A FEATHER"
  監督:Burt Gillette, アメリカ, 1931年
  35mm, 698ft., 7'46'' (24fps), sonoro
 ・"FLOWERS AND TREES"
  監督:Burt Gillette, アメリカ, 1932年
  35mm, 703ft., 7'49'' (24fps), sonoro
【ひとこと】クレジット以外には文字・音声言語は一切なしのこのプログラム。先のリリアン・ギッシュの引用の引用を引用するまでもなく、映画は言葉を使わなくても楽しいものだ。あるいは使わないから楽しいのかも知れない。使わないからこそ、子供向けのこういう映像が存在するのだし、これが映画言語というものなんだ。記号の問題にはここでは触れぬ。ううむ、これは何か言ってるようで何も言っていないのと同じだ。とにかく年齢層のずいぶん高いこの映画祭にあって、唯一子供(最終的にはその子だけだったけれども)が笑っているプログラム。おじさんおばさんおにいちゃんおねえちゃんも大いに笑う。

 ・"EL HÚSAR DE LA MUERTE"
  監督:Pedro Sienna, チリ, 1925年
  35mm, 1564m., 63' (22fps), did.: spagnolo
【ひとこと】メモを取っていない。記憶にあるのは、伴奏の若い人たち。目と呼吸でリズムを合わせ、かすかな微笑と体の揺れで楽しさを表す(そうしているように見える)。青い光の中に浮かぶ彼ら(彼女ら)の真剣な顔が印象的。あまりにそれが印象的なため、物語を全く憶えていない。かすかに断片として残る荒い映像。

22:30- 映画の中の魔術特集その2
 ・"HOUDINI, DE BOEIENKONING"
  監督:不明, オランダ, 1920年頃
  35mm, 577ft., 8'33'' (18fps), did.: olandese
 ・"(HOUDINI STUNTS)"
  監督:不明, 製作国不明, 1909年から1923年頃
  35mm, 2135ft., 30' (20fps), did.: inglese
 ・"TERROR ISLAND"
  監督:James Cruze, アメリカ, 1920年
  35mm, 3804ft., 51' (20fps), did.:inglese
【ひとこと】これを記しながら、つい思い出し笑いをしてしまったプログラムですが、貴重な映像体験であったことに間違いありません。まず、映像が良かった。フーディーニの人気者振りを示す街中の人だかりを、ロングでとらえた密なショット(顔、顔、顔)は圧巻でしたし、拘束服を着せられる時の彼の表情、タフガイ(牢屋の看守)たちが力任せに彼の体を縛る様、それらを本気で喜んでいる観客たちとさらにそれを楽しむ私たちという視線の存在がとても意識されました。それからフーディーニに失敗がないのが何にもまして良かった。本数にして相当な数が上映されましたが、当然とは言えマジシャンたる者失敗は許されないのです。
 紹介が遅れました、フーディーニはハンガリー生まれアメリカ育ちのマジシャンで、様々な芸風を経てたどり着いたのは脱出劇。日本のテレビで今でもたまに見かける、手錠なり拘束服なりで身動きが取れなくなった状態で密室や水中から脱出するというアレです。新春一発芸の王道でもありますね。あれは彼の一番の芸だったようです。あまりに得意すぎたので、それで劇映画を撮ってしまったほどです。そういうちょっと調子に乗りすぎた感じ、大いに気に入りました。
 この「脱出マジック」の日本での人気は何も近年になってからものではないようで、カタログによりますと、「『ザ・マスター・ミステリー』(この映画の宣伝フィルムが上記"HOUDINI, DE BOEIENKONING"です)は世界中で公開され、各地で敬虔な信奉者を獲得した。あるいはそれは、フランスのシュールレアリストたちであり、ジョルジュ・サドゥールによればその中でもアンドレ・ブレトンが特に魅了され、あるいはそれは、日本の映画ファンたちであった。」とあります。「脱出劇」信仰は昔から日本人にあるもののようです。フランスのシュールレアリストと日本の映画好きが同列なのがとても良いです。
 とは言いつつ僕が一番楽しかったのは、彼が必死の思いで逆さ釣り拘束着から脱出した瞬間や、ガラス張りの箱の中で如何にして手錠が外れるのか、そういったクライマックスの多くがフィルムの劣化で見えないところです。本来歯がゆいところなのでしょうが、フィルムに関して寛容です。どうでもいいところ(そんなものないはずですが)は鮮明に映るのに、肝心な場面が修復不可能なほどに永遠に失われている。運命のいたずらってモノを感じましたし、少なからぬ観客たちが同じ思いをしていたはず。貴重なフィルム(物質としてであって、作品としてではない)体験でした。
 フーディーニについてはここが詳しいです。
 あ、もちろん作品としても劇映画は面白かったです。フィルムの逆巻きもあり。

おやすみサイレント
 ・"LES FLEURS ANIMÉES"
  監督:不明, フランス, 1906年
  35mm, 99m., 5' (18fps), no did.
【ひとこと】「花が顔」という植物は時代に関係なく気持ち悪いです。
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by kantacantalavita | 2006-10-23 06:00 | 映画経験(filmについて) | Comments(0)
2006年 10月 22日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その6)

2006/10/8(2日目)

9:30- インス特集その1
 ・"The Lighthouse Keeper"
  監督:Thomas H. Ince, アメリカ, 1911年
  35mm, 890ft., 13' (18fps), ded: inglese
【ひとこと】その4と短編プログラムが入れ替えられる。作品の冒頭に第27代アメリカ合衆国大統領ウィリアム・H・タフトが映っているというのをこれを記す今知る。カタログには"Ma state ben attenti, se no ve lo perdete. (Look fast, or you'll miss it.)"とあるが、完全に見逃す。それよりも次のショット(船に渡るための板橋を渡る男女の仰角ショット)が美しすぎて、それで大いに満足した感がある。シークエンスショットは時代を考えれば珍しいことではないだろうが、そこに移動撮影が加わると常に移り変わるフレーミングの美しさと相まって、俄然「新しさ」を感じる。この辺のテクニックの時代背景/グリフィス以前の文法史については、(もちろんそれ以降も含めて)知らないことが多すぎる。
 
 ・"The Coward"
  監督:Reginald Barker (prod.:Thomas H. Ince), アメリカ, 1915年
  35mm, 5077ft., 75' (18fps), did.:inglese
【ひとこと】駄目息子と強すぎる父。父親のカメラ目線と交わらないクロスカッティング。字幕(文字記号)における訛り、いろんな字体とその読みづらさはどうしたものか。終幕で窓辺の母親のショットが入るのがすごく良い。戦闘シーンと逆光の土煙の美しさ。作品としても大いに良かったが、映写に巻数間違えがあって、それを貴重な映画経験として楽しんだ。結局最初から上映し直す。これを「儲けた」と考える。動じない伴奏者に心から拍手。

11:00- ノルディスク特集その1
 ・"Atlantis"
  監督:August Blom, デンマーク, 1913年
  35mm, 2614m., 116' (20fps), did:inglese/danese
【ひとこと】サイレント期の登場人物紹介ショットは元々好きだが、背景が黒かったりしたら、それだけで喜んでしまう。画の荒い室内撮影とクリアなロケーションの組み合わせ。ベルリン(?)・ロケで路面電車の後ろに映った横切る自転車の影。難破シーンの船上の描写が個人的にはハイライト。大西洋の夕陽とデッキの逆光ショット。字幕で笑う人々。

14:30- グリフィス特集
 ・"(signing of UNITED ARTISTS contract of incorporation)"
  35mm, 283ft., 4', (20fps), no did
【ひとこと】ユナイテッド・アーティスツ設立の契約署名の模様。動くだけで面白いチャップリン。握手するチャップリン、持ち上げられるチャップリン、列車に乗れないチャップリン、飛行機とチャップリン、フィルムの上でチャップリンは、いるだけで主役である。

 ・"The Girl Who Stayed at Home"
  監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1919年
  35mm, 6202ft., 92' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】映写機の音が聞こえる。不覚にも大いに寝る。寝て起きたら、女優のカメラ目線に睨まれた。メモには「猫背が帰ってきたときのキスは相当良」とあるが、思い出せない。

16:15- ヴァイタフォン・ヴァライエティーズ
【ひとこと】11本の短編サウンド・フィルム。フィルムという意味で映画に違いはないが、ライブやギャグといった内容からテレビやミュージックビデオを観ているような印象。それでも歌い手の個性などは動きを通して愛しく感じる。"The Revelers"の5人のタイミングを計る小さなしぐさ、"Earl Burtnett and His Biltmore Orchestra"のヴィオラとバンジョーのカメラ目線といたずら。音楽がとても良い。

18:00- 映画スター特集
 ・"The Innocence of Lizette"
  監督:James Kirkwood, アメリカ, 1916年
  35mm, 1273m., 60' (18fps), did.: tedesco
【ひとこと】初Mary Miles Minterと小間使い小僧のやらしい目つき。友達の女の子集団が並んで走る様を映す幾つかの移動ショット。数年前に京都でイタリア映画サイレント特集を観た時は強く違和感を覚えた染色フィルムも、最近ではもっぱら楽しむようになっている。この作品の赤フィルムの映像はほとんど消えかけているが、それでも見える。「消えかけているが見える」はここ数年キー・センテンス。ここまで痛んだ劣化フィルムをスクリーンで観る機会もそうあるまい、映像が溶けてしまっているという決定的なダメージが残るフィルム(修復版)を上映すること、劣化フィルム映画祭に思いを馳せる。Desmetシステムによる修復は去年、授業で触れたぞ。

21:30- 映画スター/ミュージック・イベント
 ・"Good Night Valentino"
  監督:Edoardo Ballerini, アメリカ, 2003年
  35mm, c1350ft., 15' (24fps), sonoro: inglese
【ひとこと】ルドルフ・ヴァレンティノ(本名はRodolfo Alfonso Raffaello Piero Filiberto Guglielmiと非常に長い)についての短編。映りこんだマイクについて友人と話すも答えは出ず。ヴァレンティノについて知らなさ過ぎるため、内容は楽しめず残念。ルドルフ・ヴァレンティノ関連記事が映画保存協会のHPにあります。よろしければコチラも。

 ・"Safety Last!"
  監督:Fred Newmeyer, 主演:Harold Lloyd, アメリカ, 1923年
  35mm, 6300ft., 74' (20/22fps), did.: inglese
【ひとこと】上映前に"Ditelo con la musica (Say it with music)"。毎回1曲から2曲、映画についての歌が披露される。歌手は日替わりで3~4人いるがそれぞれに面白い、緊張してるおじさん、乗り切らないおばさん、そつなく仕事をこなすおじさん、音楽職人的おじさん。この日の2曲目"The Cinematograph"は期間中、折を見ては僕の口にも上ることになる。"Oh, cinemat mat mat mat mat, cinematograaaaaaph!!"。実は初Harold Lloyd。今回の映画祭で内容では一番笑った作品。上映室全体が笑う光景。正体不明の巧妙なトリックとビルの上での約束されたキス・シーン。Prima Vista Social Clubによる演奏もすごく良い。

23:15- 映画スター
 ・"Broadway Love"
  監督:Ida Mary Park, 出演:Lon Chaney, アメリカ, 1918年
  35mm, 4325ft., 75' (18fps), did.: inglese
【ひとこと】普段は最前列で観るようにしていたが、ミュージック・イベントで席を取りそびれたので、この上映も2階席で鑑賞。そのせいとは言わないが、集中力散漫で映像を見ながらもそれは脳には届かなかった。字幕を差し替えるということについて考える、いくら読みやすいものにするとは言え、痛みや傷のみならずフォトグラムに載せられた情報や凝った装飾までを取り除いて全く違うものにするとはどういうことか。

おやすみサイレント
 ・"Das Sandbad"
  監督:不明, オーストリア, 1906年
  35mm, 20m., 1' (18fps), no did.
【ひとこと】カタログによれば、「オーストリア映画の始まりは、何年にも渡り、エロチックな映画に支配されていた」とある。全裸の女性が森から出てきて、砂地に横たわる。男が出てきて、彼女に少し砂をかける。Cinema Ritrovatoではこれにやたら感じ入ったが2度目となると「くすっ」と笑うにとどまる。

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19:00からドゥオーモ広場で、オランダはハーゲフィルムによる、ポルデノーネ無声映画祭25周年記念の立食パーティHappy Hourが開催されました。「飯を食いに来たんじゃねえ、映画を観に来たんだ」と吠えながらやってきたサチーレですが、この時ばかりは映画を忘れて(しょっちゅう忘れますけど)食事に夢中になりました。人だかりの中心にいるチャップリン研究家の大野さんやボローニャのチネテカ関係者の姿も極力見ないようにしてました。ボローニャから来たというテレビ関係者にインタビューされましたが、美味すぎる食事とすでに入ったお酒と日々の不勉強が祟って、「無声映画とは君にとって何か?」という問いに「愛だ。」と答えてしまいました。「無声映画がなければ俺はイタリアに来てないぜ。」いやいや、大元をたどればそう言えなくもありませんが参りました。

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ポルデノーネ無声映画祭では世界各国から集められた作品が上映されるため、言語の問題が常に付きまといますが、上映に関してはそれを解決すべく、同時通訳が無線でイヤフォンに届きます。Cinema Ritrovatoのときもそうでしたが、なんとなく生演奏があるのに耳に何かをつけるのが嫌で、一切これを使わないことにしました。英語は字幕なら「何とか」ついていけますし、フランス語も「どうにかこうにか」なりますが、ドイツ語、デンマーク語、スウェーデン語などになると手に負えません。まだ未熟な無声映画の映画言語とまだ未熟なそれを理解する僕の映画言語を全信頼するしかありません。文字やら音声言語で語ることが多い作品はさっぱりわからないこともしばしばで、隣によく座ったおじいちゃんには「それゃだめだ。」なんても言われましたが、イヤフォンをつけてもつけなくても理解がそれほど大きく変わらないならば、動く映像に集中していたいのです。この変な意地というかこだわりのせいで取りこぼすことが多いとしてもです。
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by kantacantalavita | 2006-10-22 20:33 | 映画経験(filmについて) | Comments(0)
2006年 10月 22日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その5)

e0017332_5171226.jpg2006/10/07(初日)

14:30- イタリア特集
 ・『カビリア』 "Cabiria"
  監督:Giovanni Pastrone, イタリア, 1914年
  35mm, 3308m., 180' (16 fps), did: inglese
【ひとこと】劣化状態(すなわち出所)の違うフィルムによって修復されたのがよくわかる。ピンボケ(映写ミス)に舌打ちをする人、さすがはマニアの中のマニアの集うところ。ゆっくりほんの少しだけ動くカメラは華麗とは言い難いが味わい深い。モロク神殿におけるいけにえモンタージュが間違っているのに気づくが、イタリア版はどうだったか。ハンニバルのアルプス越えのシーンは相変わらずすごい。フォトグラム内モンタージュは正式名称はあるのかしら。途中2度休憩が入る。酒屋の窓から上半分だけ見えるマチステは完璧なフレーム内フレーミング。アフリカのマチステのシーンで再びフォトグラム内モンタージュ(切り貼り)。カルタゴ、ソフォニズバの夢の描写、大きな手、長い爪。イタリア版を観た時はそれほど気にならなかったが、英語字幕のなんと多いこと、しかもチラつくことにうんざり。

17:15- 映画の中の魔術特集
【ひとこと】全プログラムに言及は個人の能力として不可能なのでかいつまむ。配布のプログラムが正しければ、21本の短編を上映。ボローニャの修復映画祭で観たものも多数。逆回し、天地反転、コマ撮り、人物が消え現れる、などは常套手段。Gaston Velleの"Japonaiseries"は、積み木に女の子が映り狂喜。日本を描いたものは内容はともかく着色がきれい。メリエスの"Le portrait spirite"は35mm黒白ポジのペーパープリントからの修復、ややぼやけた印象のある映像。差し出された虫を食べる2匹のカメレオンがおもしろい。着色であったはずの作品を黒白で修復するということ。2度繰り返された1つの作品、違う演奏の伴奏者に拍手。プログラムに関係ないボクシングの映像。最初で最後のチネマ・ルッフォCinema Ruffo、最前列に座る。2mくらいのところにあるスクリーン。

18:00- フィルム・フェア開幕
【ひとこと】期間中、このフィルム・フェア(実質書籍とDVDとポスターの市、どこかでフィルムの売買がされてるのかしら)で購入したものをここに一挙に記す。書籍:"Un uomo a metà - Dal soggetto al film", "Al cinematografo", "50 ans d'Archives du Film", "Cinema italiano 1945-1985: restauri e preservazioni", DVD:"The Lost World of Friese-Greene"

20:30- 開幕イベント
【ひとこと】売り切れ間際のチケットの購入に入場を断念する。書籍市を覗いて、一時ホテルに退却し、次の上映のために早めに会場(ザンカナーロ)に到着すると、入り口脇のモニターで上映室内部(スクリーン)を生放送。思いがけず、シリー・シンフォニーズ特集の"The Skelton Dance"を一部観る。完全に面白いではないか!!

22:30- イタリア特集
 ・"L'odissea"
  監督:Francesco Bertolini, イタリア, 1911年
  36mm, 784m., 43' (16 fps), did: italiano
【ひとこと】上映前、ボローニャから(僕らと同様)はるばるやって来たルーカ(ラボ見学を取り付けてくれた奇跡の人)が、ボローニャのフィルム・アーカイブの担当者アンドレア・メネゲッリを紹介してくれた。ラボのダヴィデ・ポッツィよりは幾分話しやすい。アーカイヴ見学を例によって口約束で取り付ける。このことが割りに印象的で、その後の上映はやや不鮮明。メモにも力がない。始まってすぐの"DIECI ANNI DOPO(10年後)"という字幕に笑いが起こる、欠損してるのかと思うくらいの唐突さ。海の怪物セイレーンの造形。一つ目巨人サイクロプスのトリック。スクリーン上で前後する(ように見える)映像は映写プリントの歪みか、はたまた修復段階でのフィルム密着の甘さか。こういうことを聞ける人がこの瞬間、身近にいないことを嘆く。

おやすみサイレント
 ・"La fée printemps"
  監督:不明, フランス, 1906年
  35mm, 78m., 4' (18 fps), no did.
【ひとこと】「おやすみサイレント」での上映作品は全てボローニャの修復映画祭で既観。子のない老夫婦、雪の中の老婆、冬から春へ、花束と双子。ラップ・ディゾルヴで雪景色が春の森に。こういうの好き。

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これ以後、当報告で作品を紹介する場合は、
 ・『邦題(あれば)』 "オリジナルタイトル"
  監督:‐, 製作国, 製作年
  上映プリントのフォーマット, フィルムの長さ, 上映時間 (コマ/秒), 字幕の言語

の順にします。(たぶん)

fpsの数値がこうも違うとずいぶん面白いです。fpsは昨年まで在籍していた(そして帰国後もするであろう)映画保存協会Film Preservation Societyの略称でもあります。一部から法人化の情報が届きました。祝。

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こんな具合に一週間を記すことは、果たして映画祭が終わって一週間たった今から可能なのでしょうか。
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by kantacantalavita | 2006-10-22 03:39 | 映画経験(filmについて) | Comments(0)