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2006年 09月 16日

ボローニャに宛てられた手紙

ボローニャ 
文化都市 研究の都
新しい刺激と古くからの興奮が息づく街



かつてはそんな風に形容され
あるいは今でもそうかも知れないけれど
しかし 何がしかのものはもはや戻らない
この街は古くからある映画館を急速に失いつつあるのだ

歴史地区にある上映室は
ひとつ またひとつと 情け容赦なく 次から次へとその門を閉じ
そして 地上の塵となった

メトロポリタン インペリアーレ アドミラル アドリアーノ エンバシー アルコバレーノ2
悲しみの死亡者一覧表
それでもまだ足りないというのか?
昨日は愛され続けた映画館ノザデッラと
その2つの上映室の閉館に立ち会った
一時的なものと人は言うけれど、それでも打ちのめされたんだ

あんまりだ!!!
このままでは僕たちは皆
ボローニャの歴史地区から追い出され
行き着く先は面白くもない街外れの
メドゥーザやらウーチ・チネマやらスターシティやらといった
そんな映画館しかなくなるのではないか?

映画館がひとつ閉められるたびに
僕たち皆が何か知らんを失うのだ
あるいはそれは 広くて深かった幸せの享受であり
あるいはそれは この街での暮らしやすさであり
あるいはそれは この街の住み心地 
あるいは この街に生きる喜び 
すなわちそれは 生活そのものなのである

全ての行政の愚鈍さについて
一言だけ言わせていただこうと思う
なぜならここでは政治色を問題にしているのではないからだ
この街では右派が映画館閉鎖を承認し 左派がそれを巧みに保証している
文化を促進しようなどと考えている自治体のすることがこれか?

映画館の真っ暗闇がその姿を消し
その跡地に眩いばかりの商業施設や
穴ぼこにしか見えない居住施設だらけの建物が現れる
いつまでこの悲劇は続くのか

ボローニャのルーカより

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ある映画雑誌に投稿されていた記事を翻訳したものです。僕も以前このブログで、今はなき「寒河江映画」通称「寒映」に触れて消えゆく映画館について書いた(否、ほんのちょびっとだけ書いた)ことがありますが、世界の郊外である東洋のさらに郊外の僻地であれ、かつて世界に誇った文化の都であれ、事情は大なり小なりどこでも同じようです。街中の映画館は廃業し、運が良ければ、すなわち幾らかなりの需要が残っている街であれば郊外にシネコンが現れる。ボローニャの北側にあるシネコン付近を散歩したことがあるのですが、散歩していて気が滅入りました、あまりの殺風景さ加減に。色気がありません。夜になったら、すなわち映画の時間になったら娼婦たちがうろうろしだすであろうことは想像に難くないですが、それは「映画館の色気」とはまた違う気がするんです。

僕の印象で言えば、あるいは山形もそうなのですが、まだそれでもここボローニャは人口に対してずいぶん映画館が残っている街です。どこの地区でもウロウロしていれば映画館を見つけます。公開作品の数など、考え方によっては多すぎるとも言えなくはないし、淘汰されていくのは仕方がないとも思います。あるいは強力すぎるチネテーカの存在も一般の映画館が姿を消すのに一役買ってしまっているかも知れません。なんせ安いですし、プログラムは豊かですし、なによりロードショー作品も少し待てばチネテーカでも上映されるんです。皮肉なものです。「映画」を守るべきチネテーカが、あるいはこの街に映画の一極化をもたらしているとも言えるような気がします。これは僕の想像ですけどね。

それでも映画が元気なら、映画館はつぶれません。少なくとも絶滅はしません。折りしもイタリア映画は「復活した」と言われて久しいですし、新しい監督たちが試行錯誤しながらも優れた作品を発信し始めているのです。恐れるのは、この先、それらの監督たちの作品が行き場をなくしてしまうこと、つまり、映画館が街中から消えてしまって彼らが映画を作っても上映するところがない、特色のないシネコンで特色のない名も知らん映画とイッショクタに上映され埋もれてしまう、郊外の映画館が遠いからソフト化されるのを待って自宅のテレビで映画を見る人がさらに増えること。そうならないためにも街の人々に愛されてきた映画館には映画が新しい局面をむかえるまで生き残って欲しいのです。デジタルはその新しい局面の大きなひとつです。山形では日本でいち早くデジタル配信の500円映画館が新しく作られもしましたし、あるいは映画館も来るべき(もう来てます)局面に合わせてそれ自身で動き出さなければ生き残れない時代にはなっているのです。

やっぱり映画は巨大なスクリーンで見た方が面白いのですからね。

ボローニャのチネテーカは大好きですが、アルレッキーノCinema Arlecchinoなんかは客室に映写機の音が聞こえる稀有な映画館ですし、旧チネテーカの跡地にあるヨーロッパ・チネマEuropa Cinemaもチネテーカと協力して興味深い試みをしようとしてます。ボローニャの映画事情、もう少し調べてみようと思います。

映画館保存だって映画保存のうちの一環です。

追記:前の家の近所にあったノザデッラCinema Nosadellaは昨日見に行ったらまだやってました。良かったね、ルーカ。

by kantacantalavita | 2006-09-16 02:04 | 映画とは何か(cinemaについて)


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