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2006年 10月 20日

Le giornate del cinema muto 2006 (ポルデノーネ無声映画祭点描その3)

映画祭期間中の企画の紹介です。

【特別上映】
前夜祭上映 『東への道』(ポルデノーネ、ヴェルディ劇場にて)
開幕上映 『スージーの真心』(サチーレ、ザンカナーロ劇場にて)
閉幕上映 『牡蠣の王女』(サチーレ、ザンカナーロ劇場にて)

【特集上映】
イタリア特集 『カビリア』の前と後 ITALIA - prima e dopo "Cabiria"
 イタリアのアーカイヴ(と他国のアーカイブの協力)によるイタリア映画作品の修復と、その紹介です。1914年製作の伝説的作品『カビリア』の、オリジナル・ヴァージョンと1931年に修復・再編集されたサウンド・ヴァージョンを中心に、『カビリア』以前の大作であり、ホメロスの「オデュッセイア」を映画化した初期作品のひとつ『オデュッセイア』、さらには『カビリア』から生まれたヒーローを取り上げた所謂「マチステ」モノ2作品が用意されました。
  
再考トーマス・H・インス IL RITORNO DI THOMAS H. INCE
 1984年第3回の無声映画祭で「ウェスタンの予言者トーマス・H・インス」という企画が組まれ、インスの関わった29作品が上映されました。それから20年以上が過ぎた今年、当時に居合わせなかった人たちのため、また企画自体を補完するためにこのプログラムは組まれています。インスはその14年ほどのキャリアの中で、監督/プロデューサーとして約800本の作品に携わった人のようです。

第10回グリフィス・プロジェクト GRIFFITH PROJECT, 10
 10回を数える記念的な企画。今年は1919年から1920年にかけてのD・W・グリフィスの作品を上映。カタログにはこの時代のグリフィスに関して次のようにあります。「第1次世界大戦直後の、グリフィスの黄金時代の末期」。

ノルディスク100年 NORDISK 100
 デンマークの映画会社「ノルディスク・フィルム Nordisk Films Kompagni」の設立100周年を記念した企画。カタログによれば、「今日においても、北欧の主要な製作会社のひとつ。ただし、その黄金期はサイレンと時代にあった。」とのこと。とすれば、その後の70年以上はなんだったのか気になるところです。

シリー・シンフォニー SILLY SYMPHONIES
 ミッキーマウスがデビューした1928年11月の半年後、1929年6月に始まった、動く映像と音楽を融合させたウォルト・ディズニーによるアニメーション・シリーズが「シリー・シンフォニー」です。カタログの寄稿者J・B・カウフマンとラッセル・メリットによれば、「1929年にアメリカでは、実際問題としてサイレント映画は終焉を迎え」ました。映画界の内外でその喪失が嘆かれ、その10年後には、リリアン・ギッシュが簡潔な言葉で語っています。「映画は音楽と結びつくべきだったのよ。言葉とじゃないわ。」事実、このプログラムに音声としての言葉は存在しません。

映画の中のマジック LA MAGIA NEL CINEMA
 映画の歴史における最初の10年に欠かせないのがこの奇術フィルムであり、そこにリュミエール兄弟とはまた異なる映画の父ジョルジュ・メリエス作品が含まれるのは言うまでもない史実として知られていると思います。この企画では、同様の魔術師/映画人の作品を取り上げ、そこには、リュミエール社やパテ社で仕事をしたドサ回りの手品師Gaston Velleや、後にヴァイタグラフを設立するJ・スチュワート・ブラックトンとアルバート・E・スミスのコンビなどが含まれます。

ルイーズ・ブルックス生誕100周年 LOUISE BROOKS 100
 サイレント映画のスターの生誕100年を記念する企画。1930年の作品『ミス・ヨーロッパ』とブルックスに関するドキュメンタリー"Louise Brooks: Looking For Lulu"を上映。

ヴァイタフォン・ヴァライェティーズ VITAPHONE VARIETIES
 ヴァイタフォンとは、光学式サウンドトラック以前のサウンドシステムで、レコードの再生とフィルムの映写をシンクロさせて、音のある映像を得る技術。ヴァイタフォン・コーポレーションは1926年にワーナー・ブラザーズ社によって設立され、主にサウンド映画を製作しました。世界初のサウンド映画『ジャズ・シンガー』も、ヴァイタフォン・システムを採用していたとか。1927年から1930年までの間にヴァイタフォン・コーポレーションは、約2000の短編映画を世に送り出しました。今回のプリントは、35mmオリジナルネガと同マスターポジ、ヴァイタグラフ・オリジナル・レコードから修復。(光学でフィルムにプリントしてるのかな。)

映画スター STELLE
 作品の再発見、修復、再考により見出されたサイレント期のスターを4人紹介する企画。4人とは、マリー・マイルス・ミンター、オリーヴ・トーマス、ルドルフ・ヴァレンティノ、ロン・チェイニーです。むむむ。

おやすみサイレント GOODNIGHT SILENT
 映画祭恒例の企画で、その日のプログラムの最後に短編を上映。過去にはブルーフィルム特集が企画された年があったとか。喜劇であったり、おとぎ話であったり、ちょっぴりエロチックで、異国情緒に富んでいたり。ちょっとした喜びを味わって、「じゃあ、また明日。」と帰途につくための、「おやすみ」の挨拶替わりの上映です。

ミュージック・イベント EVENTO MUSICALE
 ポルデノーネ映画祭はサイレント映画のお祭りですが、上映自体が無音ということはありません。ほとんどに生演奏が付き、それ以外は光学式サウンドトラック以前のサウンドトラックが再現(例えば上記、シリー・シンフォニーズとヴァイタグラフの特集)されます。そうした通常の音声付上映のほかに、夜からの上映の一番最初(概ね20時30分から)に、このイベントが用意されています。トーキーが現れる以前史として、世界中で映画に関する歌が歌われていたとのことで、"Ditelo con la musica(英語ではSay it with music)"と題されたこの企画では、いまだ十分には研究されていないこの現象を再現することで、歌詞に載せられた当時の状況を浮かび上がらせるというものです。余談ですが、ボローニャの授業で、「フィルムにサウンドトラックが付いていないというだけで、『映画の誕生』と言われるグラン・カフェでの上映も、ピアノ伴奏が付いていたことからも、本来、サイレント映画というものは存在しない。」と言っていたのは、Filmologiaのカノーザ先生です。むむむ。

画面外 FUORI QUADRO
 映画用語「画面外(スクリーンの外)」のアナロジーとして、その他にも、サイレント映画周辺に関する多くの作品が上映されます。

【展示 MOSTRE】
チャップリンの影 L'OMBRA DI CHAPLIN
 チャップリン研究家大野裕之さんによる「高野虎一の記憶」と題された展示。海老天を食すチャップリンや極めて日本的なパーティに埋もれるチャップリンなど、高野氏(故人)を通じて日本を知った彼が日本を訪れた時の写真を中心に、公開当時の映画ポスター、新聞、雑誌のチャップリン関連記事。

沈黙のイメージ IMMAGINE DEL SILENZIO
 ジャンナ・キアペッロGianna Chiapelloさんによる「トリノにおけるサイレント映画史」と題された写真展。メイン会場の前の道端に特設。

【ジャン・ミトリ賞 PREMIO JEAN MITRY】
 1986年から続く、映画の保存・修復に貢献した個人、団体に贈られる賞で、過去には日本人の小松弘早大教授も受賞している。今年はRoland Cosandey、Laurent Mannoni両氏に。スピーチは英語とフランス語で、イタリア語の同時通訳を聞いていなかったため、詳細不明。受賞者の前にスピーチした映画祭幹部のピエロ・コルッシPiero Colussi氏は、映画祭が終わった後に僕たちが訪れた、パゾリーニが少年期を過ごし、死後、最愛の母と眠るカザルサ・デッラ・デリーツィアCasarsa Della Deliziaにあるパゾリーニ・アーカイブの、その道向かいにあるバールのオーナーの息子だった。(そのバールにたむろしていたおっさんら談。)

【コレギウム COLLEGIUM SACILENSE 2006】
 サチーレにメイン会場が移って以来続く勉強会で、今年で8回目を数える。主に若手が中心となり、かつてここで発表なり議論なりに関わった人たちが、現在は各地の研究所、教育機関、ラボ、アーカイヴなどで活躍していると、カタログにはあります。今年は初めて、「コレギウム卒業生ex-collegian」のマシュー・ソロモンMathew Solomon氏が映画祭のプログラム(映画の中のマジック)を担当したとのこと。期間中毎日13時から開かれることになっていますが、限られた休憩時間と重なるため参加できず。「若者は飯も食わずに映画のことを考えてろ。」的なスパルタ式でありながら、どこか牧歌的な印象を得ました。間違いなく参加者は世界の優秀な人たちなのでしょうけれど。今年は、映画保存協会の活動も報告されたとか。

【フィルム・フェア Film Fair】
 かつての教会施設で開かれる書籍市と、その隣の庭のようなスペースで行われる座談会です。市ではポスターやDVDの販売もあり、暇を見つけてはしこしこ通いました。収穫もあり。

【25周年記念立食パーティ HAPPY HOUR OFFERTA DA HAGHEFILM】
 オランダのハーゲフィルムが提供する、映画祭の25周年を祝った食事会。ハーゲフィルムの大盤振舞いぶりは圧巻。

【映像と音楽の学校 SMI - SCUOLA DI MUSICA E IMMAGINI】
 サイレント映画の伴奏の教育と普及を目的としている珍しい企画。元は7人の無声映画伴奏専門家と若手の技術と経験の共有、ふれあいの場であったとのこと。幾つかの変遷を経た後で、現在は、毎年1人の若手音楽家を招待し、専門家と映画祭での演奏を共にすることでレベルアップを図るというものになっているようです。

by kantacantalavita | 2006-10-20 06:17 | 映画とは何か(cinemaについて)


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