2006年 10月 25日
2006/10/11(5日目) 9:30- グリフィス特集 ・"THE LOVE FLOWER" 監督:D. W. Griffith, アメリカ, 1920年 35mm, 7022ft., 94' (20fps), did.: inglese 【ひとこと】水中撮影による映像の最も古い体験としてジャン・ヴィゴ監督『水泳選手ジャン・タリス('31?)』を記憶していたが、あっさりと新記録。同『アタラント号』とよく似た、水槽の中のようなショット。ずいぶん滑らかになったパンニング。夫が出発した後の、妻の逢瀬/夫と女、という並行モンタージュと、相変わらずの2度繰り返しアクションつなぎ。果たしてマッチカットって言うんでしたっけ??ヒヤシンスだらけの船。 11:15- ノルディスクその6 ・"HIMMELSKIBET" 監督:Holger-Madsen, デンマーク, 1918年 35mm, 1700m., 83' (18fps), did.: danese/inglese 【ひとこと】保存版マスター35mmとカメラ・ネガから2006年にデジタル修復。学会で発表する場面では、画面内でさらに映像が使われる。朝日の中で作業しているショットの美しさ。火星で披露された踊りと下からのライティング。カタログによれば、当作品のテーマの理想主義的な思想は、公開の一ヵ月後にコペンハーゲンで初上映された『國民の創生('15)』に比して、その「くだらなさ」が酷評されたとある。が、そういう背景を無視して、出発、地上の飛行撮影、特撮による宇宙、火星の描写はなかなか良い。火星の裁判所のセット、エキストラの数が多いロングショットもとてもきれいだ。白黒映画で白粉をしないと、役者の顔はあれほどまでに黒く映るのか。 12:45- 映画の画面外 ・"A LIVELY AFFAIR" 監督:不明, アメリカ, 1912年頃 35mm, 490ft., 7' (18fps), did.: inglese 【ひとこと】謎多きフィルムとか。まずタイトルが不明で、"A LIVELY AFFAIR"は字幕から付けられたものらしい。クレジットの欠損を除けばそれ以外は揃っていると推察される。「女性参政権に関する会合」と題された集まりで夫人たちはカードゲームに興じ、酒・タバコを嗜み、会に参加するため自転車を盗み、子供と夫を家に残す。果ては収監され、それに喜ぶ夫たち。カタログの文面上で読者に情報を求めるほどに謎多き作品。 14:30- 映画の揺籃期 【ひとこと】勝手に特集の名前をつけたのではなく、イタリア語では"INCUNABULA"なのです。映画誕生直後のフィルム特集。ジョージ・ウィリアムス・コレクションGeorge Williams Family Collectionより、7本がイギリスで撮影されたもの(ほとんどがBirt Acres監督)、6本はアメリカにてエジソン・マニュファクチャリング・カンパニーEdison Manufacturing Companyによって撮られたもの、さらにこれらに、1997年の本映画祭では「失われている」とされたエジソンの3作品が加えられる。いずれも短い断片であるため、長さに応じて2度3度と繰り返して上映されました。美女と野獣(劣化強)、首も切れてしまうほどに大きな剃刀、スリの逮捕劇、カンガルーのボクシング、犬のセルペンティーヌ・ダンス、小舟とずっこけ喜劇、圧倒的なナイアガラの滝。 上映中一時中断し、大野裕之さんとイギリス人男性(上記プログラムの点検に携わったLuke McKernan教授だと思っていたが未確認)にメダルの授与。 15:45- 映画の画面外/映画スター ・"LOST AND FOUND ON A SOUTH SEA ISLAND" 監督:Raoul Walsh, アメリカ, 1923年 35mm, 145m., 6' (22fps), did.: italiano 【ひとこと】オリジナルは6333ft.、2000mちょっとか。失われた部分の多さ。ラオール・ウォルシュの、イタリアで公開された最初の作品の断片。 ・"POOR JAKE'S DEMISE" 監督:Allen Curtis, アメリカ, 1913年 35mm, 150m., 7' (18fps), did.: inglese ・"MOCKERY" 監督:Benjamin Christensen, アメリカ, 1927年 35mm, 5828ft., 74' (21fps), did.: inglese 【ひとこと】このプログラムを楽しむにはロン・チェイニーについて知らなさ過ぎる。ノートには、「無能警官×3、逃げるソーセージ」とだけある。後者ではSergeiという男に助けられる女性がいて、その女優がずいぶんと無声映画らしくない顔つき/メイクだったのを、今、思い出す。Barbara Bedfordか。 17:15- ノルディスクその7 ・"KRIGSBILLEDER" 監督:不明, デンマーク, 1914年 35mm, 700m, 38' (16fps), no did 【ひとこと】第一次大戦のドキュメンタリー映像。焼かれた町、崩れた橋、時計塔の文字盤、兵隊の行進、食事する兵士。"restauration"という看板。パンニングの連続。 ・"VERDENS UNDERGANG" 監督:August Blom, デンマーク, 1916年 35mm, 1525m, 74' (18fps), did.: danese/inglese 【ひとこと】2005年、マスター・ポジからデジタル修復したプリント。キュー・マークが出ずに映写技師さんが困ってる様子。午前中のノルディスクその6と似通った小道具、セット(天文台)、真下からのライティング。 運命を別ける姉妹。段々近づく彗星の、「絵に描いた」ような描き方に比べ、彗星衝突とその後の地上の描写は見事で、火(花火?)と煙とジオラマと、オーバーラップなどの特撮が効果的。火山の噴火や荒れた海、焼き払われた町(1本目を思わせる)など実際の映像も取り込まれている。沈んだ家のシーンはどうしたものか、小舟での救出でずっこけそうな男。世界に残された2人が、教会の鐘でめぐり合う奇跡。 20:30- シリー・シンフォニーズ/ミュージック・イベント ・"BIRDS IN THE SPRING" 監督:Dave Hand, アメリカ, 1933年 35mm, 653ft, 7'15'' (24fps), sonoro ・"WATER BABIES" 監督:Wilfred Jackson, アメリカ, 1935年 35mm, 760ft, 8'27'' (24fps), sonoro 【ひとこと】後者は子供の人魚で、人魚なのにお尻がある。お尻があったらいけないことはないが幾分奇異に映る。テクニカラー以前のカラー映画史をやるなら、テクニカラーのことも当然知っておかなくてはならん。 ・"BATTLE OF THE SOMME", イギリス, 1916年 35mm, 4694ft, 79' (18fps), did.: inglese 【ひとこと】上映前のスピーチがとても長い。原稿もなしでよくもまあ喋れたものだと感心する。日本語でも絶対僕にはできない。それはさておき、こういうフィルムがきちんと残っていて、しかも局地的とは言え世界的な場で上映されるということ。日本にはこういったフィルムがどれくらい残っているのか知らん。初めて戦車が使われた戦いをフィルムは克明に記録する。武器の様子、兵士の様子、戦いの様子。他ならぬドキュメンタリーである。プロパガンダ映画、戦意高揚映画、戦時ドキュメンタリー映画を、今観るということ。死体も何も隠さない。伴奏でアレンジされた君が代が聞こえる。 22:30- 映画の画面外 ・"THE STORY OF THE KELLY GANG" 監督:Charles Tait, オーストラリア, 1906年 35mm, 578ft, 9' (18fps), did.: inglese ・"THE BUSH CINDERELLA" 監督:Rudall Hayward, ニュージーランド, 1928年 35mm, 5679ft, 84' (18fps), did.: inglese 【ひとこと】前者のオリジナルの長さは4000ftに及ぶらしい。残された部分は限られており、しかも傷みもひどい。後者はキーウィーが出てくるところなんかずいぶんニュージーランドらしいじゃないか。これはすでに感想ですらない。 おやすみサイレント ・"BAIGNADE INTERDITE" 監督:不明, フランス, 1903年 35mm, 24m, 1' (18fps), no did. ・"BADEN VERBOTEN" 監督:不明, オーストリア, 1906年 35mm, 29m, 2' (18fps), no did. 【ひとこと】水浴びする3人娘。カメラの存在がとても良い。おやすみ。
by kantacantalavita
| 2006-10-25 19:48
| 映画経験(filmについて)
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
全体 開設しました 親愛なる日記 映画経験(filmについて) 映画とは何か(cinemaについて) Cineteca Bologna イタリアに行きます生きます 日々の写真 追加・更新・変更・リンク TOR DES GEANTSへの道 タグ
映画の保存・修復の話(67)
悲劇は楽し。(53) 映画祭(37) 『シネマテークにしねまっていこ』(27) Vittorio De Seta デ・セータ(16) 滞在許可証更新のアレやコレ。(12) 間借り人と大家の間に起こるよくある話(ボローニャ編)(11) 月間観た映画リスト(10) 500のある風景(10) Luzzara ルッツァーラ訪問記(7) HMD ホーム・ムービー(6) Gennaro Ivan Gattuso(5) 検索
フォロー中のブログ
リンク
大阪ドーナッツクラブ
イタリアのお宝発掘集団『大阪ドーナッツクラブ』。人呼んでODC。シネマテークについてのコラムを担当してました。 大阪ドーナッツクラブ公式ブログ(代表によるブログ) 『Kanta Canta La Vita』が所属する上記「大阪ドーナッツクラブ」の代表で、FM802DJポンデ雅夫のブログ。 かのうとおっさんの「ああ密談」 大阪ドーナッツクラブメンバー有北クルーラーのもうひとつの顔。 映画保存協会 日本の映画保存のある部分は、この協会が支えています。 アトリエ・マニューク 映画と映画保存とその周辺(例えばビールとか俳句とか)について書くならば僕はこうしたい、それがこのHPにあります。 赤海老ログ 本職は歌手なのに、僕にとっての彼ら二人はワインの先生です。Colli Bolognesiを共有(共憂)をしてます。 C'è profumo 日本人音楽家の多いボローニャにあって、飲み会でしか会ったことがない友人yukaちゃんのHP。ピアニスト。 ホームムービーの日 NEWS 今こそ8mm。景色を映しただけで映画になる国、イタリアに8mmカメラを持って行きます。 The Internet Movie Database 誰が呼んだかIMDb、えらく重宝します。フォーマット検索とかは最近かなり気に入ってます。 all cinema ONLINE 映画検索に重宝してます。日本語表記はあてにならない場合もあるので注意が必要です。 チネテカ・ボローニャ Cineteca Bologna。ボローニャのシネマテークです。当ブログのカテゴリー『Cineteca Bologna』はこのシネマテークの当日の上映プログラム(概ね日本語)です。 ボローニャの映画館情報(2torri.itより) チネテカ以外の映画館情報。ボローニャにはこんなにたくさん映画館があるんです。 ボローニャの図書館検索 ボローニャには相当数の図書館がありますので、映画という19世紀以降の芸術を研究する僕のような学生が探す本は大抵見つかるはずです。 イタリア国立映画博物館 Museo nazionale del cinema。トリノ。2006年8月に聖地巡礼的に訪れた際には、その建物(モーレ・アントネッリアーナ)の頂上でエレベーターが作動しなくなり、急遽ヘルメットをかぶって徒歩で地上に降りるという映画的に稀有な体験をしました。 チネテカ・イタリアーナ Cineteca italiana。ミラノのシネマテーク。「見せるための保存」を目指しているとのことで、近年新しい上映室が増設されたようです。その名に「イタリア」を冠していることからもわかるようにその歴史はボローニャのそれよりずっと古い。 チネテカ・デル・フリウリ Cineteca del Friuli。北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州ウーディネ県ジェモナにあるシネマテーク。このブログでも報告したポルデノーネ無声映画祭はこのシネマテークが中心になっています。イタリア国内に5つあるFIAF加盟団体の中では最もマイナーなイメージがあるが、実は違いそう。行ってみたい施設のひとつ。 チネテカ・ナツィオナーレ Cineteca nazionale。ローマにある映画実験センター。国立の映画学校で、そのシネマテークはローマのど真ん中トレヴィの泉近くにあるとか。ミラノ、ボローニャ、ローマ間では上映用のフィルムのやり取りが多いように感じてます。 東京国立近代美術館フィルムセンター 日本におけるシネマテークとは何か?考えてみます。常設展や特別展は、何時間でも過ごせます。 シネマテーク・フランセーズ Cinémathèque française。説明無用(?)、世界中のシネフィルの聖地シネマテーク・フランセーズ。2005年、多くの映画人が通ったシャイヨー宮からベルシーに移転し新しい建物になりました。写真を見た限りですが、ものっすごくきれいみたいです。住みたい。 ドイツ映画博物館 DEUTSCHES FILMMUSEUM。フランクフルトにある映画の博物館(そのまま)。ドイツ語も勉強しますか。ドイツと言えばムルナウ財団は、ボローニャのシネマテークの上映でもしばしばその名前を目にします。 オランダ映画博物館 FILMMUSEUM。アムステルダムにある映画博物館。上記ドイツ映画博物館と一緒に訪ねてみようかと計画中。学生でも6.50ユーロ、会員でも4.50ユーロとはちと高いか。(英語あり) Antonio Pignottiコレクション 2006年の「ホームムービーの日(in Italia)」で映写機などの展示をしていたコレクターの方です。いつの間にかリンクしてくれていたので、晴れて初めてイタリアのHPと相互リンクになりました。(イタリア語) Planet World 大阪梅田のシネマテーク。大阪にプラネットありと謳われた「生きた」伝説。 Planetary Film Archives 上記プラネットのフィルムアーカイブです。資料整理のお手伝いをしました。 internet bookshop ITALIA イタリアの本が買えます。バカンスシーズンやその前後を除けばかなり信頼度は高いです。送料も高いですけど。 日本の古本屋 現実世界での古本屋めぐりも好きですが、電脳世界のほうが欲しい本がみつかったりします。 comfm.com イタリアのラジオがネットで聞けます。生のイタリア語を欲してる方にはお薦めです。 RADIO MARGHERITA イタリアのポップミュージックを新旧問わずに流しまくる秀逸なHP。ホームの下のところにある「Ascolta Radio Margherita (マイクの絵)」をクリックすると、Windows Media Playerで聴くことができます。 NHKラジオイタリア語版 その日のニュース約5分と曜日ごとに決められたテーマ約10分をイタリア語で聞くことができます。他の言語もあり。イタリアのラジオに比べ、音声が安定しているように思えます。 Consorzio Vini Colli Bolognesi ワインは全く無知に等しいですが、なぜかしら「おらが村主義」は大切にしていたいのです。日本で一番「ボローニャの丘」について詳しい人になりたいです。「ボローニャの丘」ワイン協会のHP(伊語or英語)。 大相撲 がんばれ力士。 インターネットでモンドリアン こういうのも好きです。 氷温熟成 Bravo! KANTA このビールを評したずっと年下の女の子曰く、「苦味の奥に甘さがある」。ううむ。僕のことを言ってるのでしょうか。 Google日本 何かと便利。 Wikipedia Japan 何かと便利。 以前の記事
2018年 07月 2017年 10月 2011年 07月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 04月 2010年 02月 2009年 09月 2009年 02月 2008年 12月 2008年 07月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||