2006年 12月 29日
窮地脱出の方法論として正しいかどうかは別として、僕がそのとき取った行動は、まず事態を把握すること、次いで「最悪の事態」を想定し、それに対処する方法を考えること、最後にその「最悪」からプラスの方向へと思考をシフトしてゆく、というものだった。 落ち着け。一体今、俺はどういう状態にあるんだ?暖かい我が家から締め出しを食っている、どうやらそれは明らかだ。全てが移ろいやすく、何事にも確証の持てないこの時代の、唯一動かしがたい事実、手元にある鍵で家に入れない。主なき部屋は当然呼び鈴に答えるはずもない。同居人たちはどうした?一人はすでにクリスマス年末年始帰省し、もう一人も同様、非常に近い未来(一両日中だ)に帰省する。昨夜は年末のあいさつ回りで帰宅していない。帰省しない俺にはここにしか居場所はない。いつ帰るとも知れんその同居人を当てにするな。他の鍵はどこにある?大家だ、電話するか?携帯電話を部屋に置き去りにした今、その番号を知りえる方法は限られている。向かいに住む代理人だ。不在。結局はまだボローニャのどこかにはいるはずの同居人に電話をするか?番号は携帯内にしかないことは数秒前に確認したろう。ではその実家に電話して取り次いでもらうか?一銭も持っていない。ちょっと待て、体が冷えてきたぞ。そりゃそうだ、素足にサンダル、短パン、Tシャツにフリース、呪われた坊主頭という格好である。稀にみる暖冬とは言え一応冬であることにかわりはない、下手をすれば文字通り「命取り」になりかねないその姿は、混乱する頭を幸か不幸かクールダウンし、勢い余って思考を鈍らせつつある。 いずれにせよ、ここでじっとしている訳には行かない。 まずはこの場を離れよう。このままでは何も始まらない。友人宅に向かうか?朝10時前に起きてる友人などいない。じゃあ公園でヨガでもして時間を潰すか?この期に及んで潰す時間など持ち合わせていない。スーパーで体温の上昇を図るか?むなしいだけだ。やはり、困った時の友人、まだ寝てるだろうなどとは言っていられない困難に出くわしたのだ、理解してくれるだろう。幸い数日後からの留守番を俺に頼むという負い目を持った友人宅はそう遠くない。「助け合って生きていこう」などと交わしたあの日の約束。まさか助けられることになるとは。おいおい、ちょっと待て。助け合い?奴が俺に鍵を前もって渡すなんてことをしなければこんなことにはならなかったはずじゃあ・・・。否、そういうことを言うのは問題を解決して、ジョーク含みの思い出話をするときに言え、今は遠吠えにしか聞えん。 屋外から部屋に到達するまでに3つの鍵を要する我が家から一度離れるということは、次にこの場に来る時には何らかの解決策を携えて、ということになる。「とりあえず」的な感覚で軽はずみに動いてよいのか?しかしそれ以外に方法はない。思いつきとは言えそれ以外に取るべき道は思い当たらんのが事実だ。 土俵は固まった。結構まずい状況にあるというのは確認できた。こういう時は希望的観測ではなく、よりシビアで、スマートな思考が求められる。まず一番やってはいけないことはなんだ?この格好で年を越すこと、同居人が帰ってくる年明けを指をくわえて待っているだけ、これはなんとしても避けねばならない。そもそもどこで指をくわえるんだ。次に、極力コトを大きくしないこと、巻き込むのは最低限助けになってくれると信頼できる人間だけで良い、役立たずに振り回され踊らされ一喜一憂するのはまずい、不毛であるばかりか無駄に体力ばかりを消費する結果になり兼ねん。どういう人間が必要だ?落ち着いて考える場を提供してくれる者、連絡係として使える者、うむ、目星はすぐつく。友人がそう多くないということは考えようによっては(今回のような場合には)時間の短縮に大いに役立つ。「使える」などと言い方は悪いが、それならば言わなければ良いのだ。冷徹。クールに徹しろ。 オーケー。悪くない。走って友人宅に向かうことはこの寒さをしのぐにも好都合だ。走りながら打開策を練る。俺の体力を以ってすれば疲れと寒さで思考がストップするより先に着くこともできる。悪くない。開封された小荷物を手に走り出す。本を片手にサンダルでジョギングする人間など見たこともないし、事実、珍奇の目が容赦なく突き刺さるが、"2006 in Italia"をこんな無様な姿のままで終えるよりかマシである。 往々にして、「こういう時に限って友人は不在」と相場は決まっているのだ。 (つづく)
by kantacantalavita
| 2006-12-29 03:16
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イタリアのお宝発掘集団『大阪ドーナッツクラブ』。人呼んでODC。シネマテークについてのコラムを担当してました。 大阪ドーナッツクラブ公式ブログ(代表によるブログ) 『Kanta Canta La Vita』が所属する上記「大阪ドーナッツクラブ」の代表で、FM802DJポンデ雅夫のブログ。 かのうとおっさんの「ああ密談」 大阪ドーナッツクラブメンバー有北クルーラーのもうひとつの顔。 映画保存協会 日本の映画保存のある部分は、この協会が支えています。 アトリエ・マニューク 映画と映画保存とその周辺(例えばビールとか俳句とか)について書くならば僕はこうしたい、それがこのHPにあります。 赤海老ログ 本職は歌手なのに、僕にとっての彼ら二人はワインの先生です。Colli Bolognesiを共有(共憂)をしてます。 C'è profumo 日本人音楽家の多いボローニャにあって、飲み会でしか会ったことがない友人yukaちゃんのHP。ピアニスト。 ホームムービーの日 NEWS 今こそ8mm。景色を映しただけで映画になる国、イタリアに8mmカメラを持って行きます。 The Internet Movie Database 誰が呼んだかIMDb、えらく重宝します。フォーマット検索とかは最近かなり気に入ってます。 all cinema ONLINE 映画検索に重宝してます。日本語表記はあてにならない場合もあるので注意が必要です。 チネテカ・ボローニャ Cineteca Bologna。ボローニャのシネマテークです。当ブログのカテゴリー『Cineteca Bologna』はこのシネマテークの当日の上映プログラム(概ね日本語)です。 ボローニャの映画館情報(2torri.itより) チネテカ以外の映画館情報。ボローニャにはこんなにたくさん映画館があるんです。 ボローニャの図書館検索 ボローニャには相当数の図書館がありますので、映画という19世紀以降の芸術を研究する僕のような学生が探す本は大抵見つかるはずです。 イタリア国立映画博物館 Museo nazionale del cinema。トリノ。2006年8月に聖地巡礼的に訪れた際には、その建物(モーレ・アントネッリアーナ)の頂上でエレベーターが作動しなくなり、急遽ヘルメットをかぶって徒歩で地上に降りるという映画的に稀有な体験をしました。 チネテカ・イタリアーナ Cineteca italiana。ミラノのシネマテーク。「見せるための保存」を目指しているとのことで、近年新しい上映室が増設されたようです。その名に「イタリア」を冠していることからもわかるようにその歴史はボローニャのそれよりずっと古い。 チネテカ・デル・フリウリ Cineteca del Friuli。北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州ウーディネ県ジェモナにあるシネマテーク。このブログでも報告したポルデノーネ無声映画祭はこのシネマテークが中心になっています。イタリア国内に5つあるFIAF加盟団体の中では最もマイナーなイメージがあるが、実は違いそう。行ってみたい施設のひとつ。 チネテカ・ナツィオナーレ Cineteca nazionale。ローマにある映画実験センター。国立の映画学校で、そのシネマテークはローマのど真ん中トレヴィの泉近くにあるとか。ミラノ、ボローニャ、ローマ間では上映用のフィルムのやり取りが多いように感じてます。 東京国立近代美術館フィルムセンター 日本におけるシネマテークとは何か?考えてみます。常設展や特別展は、何時間でも過ごせます。 シネマテーク・フランセーズ Cinémathèque française。説明無用(?)、世界中のシネフィルの聖地シネマテーク・フランセーズ。2005年、多くの映画人が通ったシャイヨー宮からベルシーに移転し新しい建物になりました。写真を見た限りですが、ものっすごくきれいみたいです。住みたい。 ドイツ映画博物館 DEUTSCHES FILMMUSEUM。フランクフルトにある映画の博物館(そのまま)。ドイツ語も勉強しますか。ドイツと言えばムルナウ財団は、ボローニャのシネマテークの上映でもしばしばその名前を目にします。 オランダ映画博物館 FILMMUSEUM。アムステルダムにある映画博物館。上記ドイツ映画博物館と一緒に訪ねてみようかと計画中。学生でも6.50ユーロ、会員でも4.50ユーロとはちと高いか。(英語あり) Antonio Pignottiコレクション 2006年の「ホームムービーの日(in Italia)」で映写機などの展示をしていたコレクターの方です。いつの間にかリンクしてくれていたので、晴れて初めてイタリアのHPと相互リンクになりました。(イタリア語) Planet World 大阪梅田のシネマテーク。大阪にプラネットありと謳われた「生きた」伝説。 Planetary Film Archives 上記プラネットのフィルムアーカイブです。資料整理のお手伝いをしました。 internet bookshop ITALIA イタリアの本が買えます。バカンスシーズンやその前後を除けばかなり信頼度は高いです。送料も高いですけど。 日本の古本屋 現実世界での古本屋めぐりも好きですが、電脳世界のほうが欲しい本がみつかったりします。 comfm.com イタリアのラジオがネットで聞けます。生のイタリア語を欲してる方にはお薦めです。 RADIO MARGHERITA イタリアのポップミュージックを新旧問わずに流しまくる秀逸なHP。ホームの下のところにある「Ascolta Radio Margherita (マイクの絵)」をクリックすると、Windows Media Playerで聴くことができます。 NHKラジオイタリア語版 その日のニュース約5分と曜日ごとに決められたテーマ約10分をイタリア語で聞くことができます。他の言語もあり。イタリアのラジオに比べ、音声が安定しているように思えます。 Consorzio Vini Colli Bolognesi ワインは全く無知に等しいですが、なぜかしら「おらが村主義」は大切にしていたいのです。日本で一番「ボローニャの丘」について詳しい人になりたいです。「ボローニャの丘」ワイン協会のHP(伊語or英語)。 大相撲 がんばれ力士。 インターネットでモンドリアン こういうのも好きです。 氷温熟成 Bravo! KANTA このビールを評したずっと年下の女の子曰く、「苦味の奥に甘さがある」。ううむ。僕のことを言ってるのでしょうか。 Google日本 何かと便利。 Wikipedia Japan 何かと便利。 以前の記事
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