人気ブログランキング |

KANTA CANTA LA VITA

forsecanto.exblog.jp
ブログトップ
2007年 01月 24日

Future Film Festival 2007 (後記)

e0017332_8393488.jpg今週の日曜日でボローニャの冬を飾る映画祭フューチャー・フィルム・フェスティバルFuture Film Festival(以下、FFF)が閉幕しました。細々の都合(あくまでボローニャの中心はチネテカなのです、僕にとって)で多くのプログラムには参加できませんでしたが、参加したプログラムはどれも大いに楽しみました。

せっかくフリー・パスを購入したのに、実際に鑑賞したのは、中国アニメーション「上海美術電影」特集、「白雪姫はもうすぐ70歳」特集、長編アニメーション『銀色の髪のアギト』、実写版『時をかける少女』だけで、劇場版アニメーション『時をかける少女』は実写版の上映開始前の周りの人間の評判も良かったことですし、ぜひ観ておくべきだった気はしていますが、この評判に乗じて一般公開されることを祈りつつイタリア語吹き替えに備えます。

---------------------------------------------------------

さて、遅まきながらFFFというイベント自体をもう少し見てみます。閉幕後になってしまったのは悪しからず、これから益々発展するであろうFFFの「フューチャー」への期待を込めているから後でも良いのです。

フューチャー・フィルム・フェスティバルは1999年に初めて開催され、来年はいよいよ10周年を迎えます。会場は、現在はスクリーン4つを擁する中央駅近くのカピトルCapitolが使われていますが、それまでは初回は駅から遠い旧リュミエールCinema Lumière、第2回は同リュミエールと同じく駅から遠いチネマ・ノザデッラCinema Nosadella、2002年は同ノザデッラとチネマ・アルレッキーノCinema Arlecchino、2005年はカピトルと今は亡きエンバシーEmbasseyという具合に会場選択の紆余曲折が続き、実際現在のような開催になったのは昨年からのようです。

映画祭のHPを見てみますと、まず初めに「開催以来フューチャー・フィルム・フェスティバルは、アニメーションと特殊撮影を特集するイタリアで最も重要なイベント」であるとの紹介文があります。日本の作品も多く上映されますが、映画祭の規模と歴史を考えれば、イベントとしては「本国日本」に先んじている感があります。あるいは僕が知らないだけかも知れませんが、少なくとも世界中古今のアニメーションを集めた10年も続いている特集上映は日本では聞いたことがありません。(もしあれば教えてください。)

毎年、様々な映画人を招待して座談会やインタビューなどが企画されます。日本に比べ「映画関係者が観客に近い」と言われるイタリアです(このブログでも何度か紹介しました)が、そうした文化的底力、映画土壌の豊穣は各種映画祭を始め一般館での上映、シネマテークでの特集上映などでいかんなく発揮され、我々観る者を大いに刺激するばかりでなく、より多くの人間を映画界へと誘い、結果その豊かさは循環し映画産業自体の活性化に結びついていると思います。

古い時代の映画研究に携わるものとしてこの映画祭を評価する(勝手に喜んでいるだけですけど)のは、その名の通り映画の未来と新しい技術に着目したイベントであるFFFが、同時にテレビ・ゲームやインターネットを取り上げるに留まらず、作家や制作会社の回顧上映や過去の特撮技術の特集などの企画により過去の映画人たちの業績をも取り上げている点です。昨年のイジー・トルンカ特集、今年の中国アニメーション特集などがそれで、歴史と最新技術(あるいは未来)の比較によって(比べずとも同じ期間内に観るだけでも)作品の良し悪しでは計れないものが見えてくるんだと思います。今年組まれた中国の戦後以降のアニメーション特集が、日本のアニメーションで育った僕にとって、生まれる以前あるい同時代の作品であるにもかかわらず「新しい発見」であったことが最たる例だと思います。知ることが学ぶことであるとすれば、これらのレトロスペクティブはこの上ない垂涎の的なのです。第1回開催で宮崎駿の初期作品(当時にして20年前の作品)を、第4回開催で手塚治虫の60年代70年代を中心とする作品、2005年には20年代30年代の日本のアニメーションが上映されていることも、現在のアニメーション産業における日本の占める位置、さらにはイタリアにおけるアニメーション文化への日本の貢献度を考慮に入れれば、この映画祭の方向付けとして明確だったと思います。参加していない者の言い草でないかも知れないですけれども、2年連続参加したことですし、まあ良いでしょう。

昨年の開催では、5日間延べ600時間の開催期間中、130のプログラムに30,000人の入場客、世界中から250人を超すジャーナリスト、250人以上のイタリア国内の専門家、200を上回る関連記事、2,200,000回に上る公式HPの閲覧があったと映画祭の報告にはあります。これはとんでもないことです。昨年と今年のFFFを見る限り、若者を中心に子供から年配者まで、アニメーション愛好家(あるいはアニメ好き)から専門家研究家まで幅広く受け入れられたイベントのようです。多くの人々が日本のアニメーションに関心があるのは上映室にいるだけで伝わります。あちこちから、日本語のタイトルが聞えてきます。

教授と思しき人物と生徒と思しき女学生の会話

女学生:「Hayao Miyazakiの作品だったら"La città incantata"が好きですわ、教授。」
教授:「ふむ、原題はなんだったかな、それは?」
女学生:「ええと、オリジナルのタイトルはなんだったかしらん・・・」
教授:「"Majo no takkyu-bin"か?」
女学生:「いいえ、それは"Kiki's delivery service"ですわ。」
教授:「おお、だったら"Sen to Chihiro"だな。」
僕:(心の中で)「当たり!!(しかし省略するとはなかなか上級ですな、教授)」

第10回開催の来年1月にここボローニャにいないであろうことがとても寂しく感じられます。今年のマッドハウス関係者の豪華な顔ぶれ以上の来客があるかと思うと嫌が上にも期待は高まってしまうのです。(と、言いつつ、彼らを見かけたのはホールで僕の友人らと談笑している姿を遠巻きに見た一度きりでしたが。座談会も本当は行きたかったんですよ。)

という訳で、来年以降もその動向を追ってみたいFFFなのです。

---------------------------------------------------------

それぞれの作品に関してはこのブログのタグにある「月間観た映画リスト2007年1月」とそのコメントで紹介してますが、特集の性格から言及できていない「白雪姫はもうすぐ70歳」特集だけここで触れておきます。

なぜ70歳かというとご存知の方もいらっしゃるとおり、ウォルト・ディズニー製作の『白雪姫 Snow White and the Seven Dwarfs』が1937年12月21日にロサンゼルスで初めて公開されたことに由来します。その日を白雪姫の誕生日とすると今年の12月21日に白雪姫は古希を迎えるのです。

ディズニー少年が1912年にブロードウェイで『白雪姫』の舞台を見るまでのエピソード、37年に作られるまでのエピソード、公開当時のエピソードがアカデミア(ボローニャの美大)の教授カルロ・マウロ氏によって熱っぽく語られました。「ハリウッド」を「オッリウードゥ」、「オールド・ミル」を「ホッルド・ミル」という見事なイタリア語英語も楽しかったです。(日本語英語の僕が言う言葉でもないですが。)彼の個人コレクションと思しきマニアックな短編フィルムの映写は全て8mmでの上映した。余談ですが、奇しくも、この上映で8mmを、『時をかける少女』で16mmを、中国アニメーション特集と『銀色の髪のアギト』で35mmを体験した稀有な映画祭となりました。昨年秋のポルデノーネ無声映画祭で知った30年代のディズニー製作アニメーション「シリー・シンフォニーズ Silly Symphonies」とのリンクもあって大いに楽しみました。計16本の小片映画でしたが、アニメーション制作のドキュメンタリーなども含まれていて、別室の「NANA特集」や「マッドハウス特集」を反故にして損はないプログラムでした。『白雪姫('37)』を35mmで観る機会、求めます。

---------------------------------------------------------

ボローニャの夏を代表する映画祭チネマ・リトロヴァートCinema Ritrovatoもそうですが、映画祭の運営に携わる人たちが若いことにとても刺激を受けます。イタリアの映画祭で分けてもらった前記の「イタリアの底力」をいつの日か発揮したいものです。

by kantacantalavita | 2007-01-24 04:38 | 映画とは何か(cinemaについて)


<< 2007/01/24 水曜日      2007/01/23 火曜日 >>