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KANTA CANTA LA VITA

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2007年 01月 27日

外部連載コラム裏話その4

外部コラム「シネマテークにしねまっていこ」(第4回)について少し。

前回分(チネマ・リュミエール潜入の前編)では、自分でも、ちょっと書きすぎたなと思ったくらいに長々と書いてしまって、後編がやや尻ツボミになってしまったのを反省しています。

このブログでは、出し惜しみして結局書けなかったネタがずいぶんあって、そんなことになるくらいなら書くだけ書いて、ストックのネタが尽きたのなら改めて探せば良いというのを今回はモットーとしてコラムには取り組んでおります。後悔(してるんですけど)しても仕方がないので、とりあえずは尽きるまでやってみましょう。

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外部連載コラム裏話その4_e0017332_9433435.jpgリュミエール内に飾られていた「リールとその周り」、つまり「映画cinema」について。

リールってなんだろうって思った方もいるんじゃないでしょうか。一般的には、リールといえば釣竿にくっついてる糸巻きの方を想像する人のほうが多いんじゃないでしょうかね。うん、何かを巻くものをリールって言うんですよ、きっと。で、映画の中で巻くことを必要とするもので、まず頭に浮かぶのはフィルムですよね。そうなんです、フィルムを映写したり持ち運びしたりする時に巻くもの(軸と、巻いたフィルムが崩れないようにする支えが付いてる)をリールって言うんですね。

外部連載コラム裏話その4_e0017332_945234.jpg画像を見つけることはできませんでしたが、恐らくはリュミエール兄弟のシネマトグラフも映写時にはリールに巻いたフィルムを流したのではないでしょうか。シネマトグラフではないですけど、初期の上映で光源の前を通り過ぎたフィルムが映写機下のかごに納まっている画像を見たことがあります。投射後(仮にアウトとしましょう)はそれでも良いかも知れませんが、実は全く良くないんですけど、さらにインの方はそうは行かないですよね。上映時間が1分未満の『列車の到着』でさえ15mの長さがあったとのことですから、そのカサを考えれば巻いておくのが一番です。巻かないわけにはいかないのです。だとすれば、映画の誕生がエジソンのキネトスコープではなくリュミエールのシネマトグラフだと言われるのは個人鑑賞的にのぞくのではなく観客の前のスクリーンに映写したことが最も大きな理由とされますが、それを実は陰で支えていたリールは映画史の最も古い証人かも知れません。巨大な輪っか状にしたフィルムを無数の車輪を介して延々と見ることができたキネトスコープにはリールはありませんもんね。実際のところ、エジソンは次に発明した(特許を買い取った)ヴァイタスコープではリールを採用しているようです。

35mmのフィルムで撮られた映画は毎秒24コマの上映で、90分の上映時間ならその全長は約2500mにも及びます。幾ら薄っぺらのフィルムとは言え、きちんと巻いたとしてもその直径はとんでもないものになるはずですし、そもそも重さが20kgくらいになるので扱いに困ってしまいます。そこで扱いやすいサイズのリールに分けて上映することになります。90分の作品は概ね、直径40cmのリールで5巻になります。それでも1巻4kgですからなかなか手ごわいんです、フィルムは。

外部連載コラム裏話その4_e0017332_10443554.jpg90分の作品を5巻に分けるということはどういうことか。1回の上映の中に4つの繋ぎ目ができるということです。映画館で映画を観ていて(家庭用ソフトでも見かけますが)、画面の右端に一瞬小さな丸が見えたという経験はないでしょうか。実はあれがその繋ぎ目の印で、キューcueとか呼ばれるんですけれども、観客にそれを知らせるためにあるのではもちろんなく、映写技師がフィルムを交換するための目印なんですね。僕は実際に35mmの映写をしたことがないからよくわからないんですけれども、このことを考えると、5巻のフィルムを途切れなく映写するには最低2台の映写機が必要になります。つまり上映中のフィルム用とその次の巻用です。キューが見えたらもう1台の方を動かす。観客に知られずにつなぐには技術が要りそうです。時々古い作品の映写でキューがなかったりして、繋ぎがうまくいかず映写技師が驚いている様子が想像できることがあります。

リールの大型化で90分を2巻で上映できるようになってもそれでも映写機は2台必要で、映写機が1台しかない場合は、交換の時に例の休憩intermezzoが入ります。観客はトイレに行ったり前半の復習をしたり何ならエスプレッソの1杯でも飲めますが、映写技師はフィルムを交換して、巻き直して、場合によっては他の映画館に持って行ったりして(その辺の細かい作業は『ニュー・シネマ・パラダイス』が詳しいです)、休憩はないのです。

外部連載コラム裏話その4_e0017332_950151.jpgこのことを知って以来、映写技師を尊敬し、時には叱咤激励するようになった慎ましくも無責任な観客の一人の僕ですが、小柄な女の子の友人が「私、アルバイトで映写してるの」なんていうのを聞いて度肝を抜かれたことがあります。何となくフィリップ・ノワレ扮するアルフレードみたいなおっさんが、機械油にまみれたランニング・シャツ姿で悪戦苦闘している姿を思い描いていたからです。もちろんあれは50年位前の話で、今はそんなんじゃありません。巨大なリール1巻で済んじゃうんですね。スイッチ・ポンです(そうじゃない技師さん、ごめんなさい、無知のタワゴトとお許し頂きたい)。リールさえない映写機もあります。映写機の後方に巨大な円盤が水平に回っていて、その上を中心軸無しにフィルムが回っているのです。ちょっと説明しにくいですね。興味ある方はボローニャならODEONという映画館でその様子が見れますし、トリノの映画博物館でも実際稼動しているそれを見ることができます。こうなるとフィルムの交換はない訳ですからほとんどほったらかしで良さそうな気がしますが、それは新しいフィルムがやってくる最新の機材の揃った映画館での話であって、実際のところ僕が嬉々として行くような映画館では依然、フィルムと映写機と技師の格闘が続いているわけです。巻を替えるタイミング(これはやってみないと判らない気がします。想像がつかない。)、替えるたびにピントをチェックして、スクリーンをにらみ続けながら次の巻の用意と映写後のフィルムを巻き直して、悪ガキTotoの相手をして・・・。タフな仕事です。

この次に鑑賞中にキューが見えたときは、2秒スクリーンから目を離して映写室を振り返り、たまにはその中で奮闘しているであろう映写技師たちと健気に回っているリールを労ってあげてください。その代わり、サボってたら容赦なくツッコミましょう。映写は大変なんだという事情はわかりましたが、その上で、それを何とかすること、つまりリールは映写を円滑にすることを、映写技師はそのためのあれやこれやを求められているのです。
 
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外部連載コラム裏話その4_e0017332_9512812.jpgリールは実はなかなか面白いということだけ言いたかったのに、そのリールを中心にダラダラ書いてしまいました。ですが、ダラダラ書けるということからも判るように映画とリールは切り離せるものではなく、映画史の証人、「映画史と共にあったリール」と言っても過言ではないことは何となくわかってきたようです。映画史の材料としてのリールも面白いですが、普段あまり人の目に触れることはないこのリール、もし見かけたときはじっくり眺めてみてください。よくよく見ると実はなかなかかわいくて、支えの部分(円盤面)の模様がすごく多様です。その円盤状の幾何学模様それだけでも十分楽しめて、だからこそ飾りとしてもなかなか冴えているわけで、映画館の待合室やチケットカウンターなどではとても良い雰囲気を出すのです。模様が素敵な金色のリールに赤いリーダー(巻いたフィルムの保護用フィルム)で飾りをすれば、あっという間にリールがリースになります。ほしくなったでしょう?ネット・オークションなどで時々見かけますが、中古でも(中古の味があるからこそ?)、結構値が張りますのでまだ手を出したことはありません。

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コラムの中で触れた『1900年』についても少し書こうとも思ってましたが、思いの外長くなったので場を改めまして投稿いたします。あ、これを出し惜しみと言うんですね。悪しからず。

by kantacantalavita | 2007-01-27 07:40 | 映画とは何か(cinemaについて)


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