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KANTA CANTA LA VITA

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2007年 03月 30日

Bologna, ti voglio bene (好きだよ、ボローニャ)

ああいう書き方が悪かったとは思います『KANTA CANTA LA VITA』です。

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修行だとか何とか言いましたけど、400kmほど離れたローマに行ってました。10日間で2往復し、計8日間の滞在でした。移動の煩わしさと旅の目的が勉強という、その厳しさから修行なんて言っただけのことです。ローマ第3大学でのイタリア映画史の授業に参加し、面白い映像も手に入りましたし、美味しい食事をし、行きたかった映画館にも行って、新たな友人も増え、本を買い、実りあるものでした。

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ところがローマというやつは、一時は世界の中心だったわけで、今でも世界中から観光客の集う巨大都市なわけで、普段ボローニャで、しかもかなりの割合でインドアな生活をしている僕には、宿泊地がずいぶんな郊外だったとは言え、そんな巨大都市で過ごすだけで疲弊します。

危険な雰囲気漂う地下鉄やバスに揺られ、観光客の間を縫うように歩き、雹や霰に降られ、先日までの暖かさがウソのような寒さに凍え、所かまわず散らかされるゴミに視覚的に辟易とし、鳴り止まないクラクションに聴覚的に苛まれ、最終日にはほとほとくたびれ果てておりました。こういう「修行」は避けられるものなら避けたいんです。

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そんな日々も昨日が最終日。ボローニャ行きの列車に乗るため、あるいは帰国前最後かもしれないテルミニ駅に向かいます。地下鉄で30分、のはずでした。ところが、途中の駅で乗客全員が降ろされる。列車の故障。渋滞の中の満員代行バス。翌日に控えるストライキの前夜祭か、結果的なストライキのためのストライキ。車窓からの風景、皮肉な会話、二重駐車に遮られたおじさんの憤慨とほとんど我関せず的に出てきたもう一方の当事者の悪びれる様子もない身振り、普段なら大いに楽しむであろうイタリアの典型的な光景も脳みそまで届きません。

・・・・・・ボローニャに帰りたい。

フィレンツェでモツのパニーノでも食ってやろうなんて目論見は、切符を買う時点で霧散します。モツよりボローニャ。席の埋まったコンパートメント、眠らせないアナウンスと車内販売、うろつく乗客。走れベイビー、一刻も早くボローニャへ。おかしなもので、ようやく着いたボローニャ駅で見た人込みは優しく温かなものでした。

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優しいボローニャの優しい我が家、普段自転車で行き来する街中も、こんな時はバスに限る。

Bologna, ti voglio bene (好きだよ、ボローニャ)_e0017332_22503166.jpg・・・・・・、なぜバス停がバスでごった返している?どこまで続いてるとも知れないバスの列。理解不能。動いているバスも路線を変えている。おいおい、ここはボローニャだろ、ローマじゃないぜ。カオスはローマで十分味わった。こんな時に限ってやけに冷えやがる。俺が行く先々に寒さがあり、不運があるのか、俺がそれを引き起こすのか。み~んきあ。同居人の懐かしい口癖、悪態。暖かい我が家はしかし、このバスの渋滞の先にある。危険な香りは避けて通るのが絶対条件だが、如何ともし難い。バスとバイクと車の列は果てしなくも思える。クラクションと人だかり。そんなローマ土産はいらないぜ。

駐車したトラックが細道をふさぐ。ストラーダ・マッジョーレ、もっとも大きな道、素晴らしき道。名前だけが空しく響く。

Bologna, ti voglio bene (好きだよ、ボローニャ)_e0017332_22582734.jpg「俺に言わせりゃ、通れるはずだよ。」
「いや、見てみろよ、仮に原付を移動してもその先の標識で身動きが取れなくなるんだ。」
「スペクタクル!スペクタクル!!」

バスに閉じ込められたみんな、悪いね、俺が帰ってきたからさ、君らがそこで指をくわえているのは。スペクタクルの社会、人生という旅。

しかしちょっと待て、ここはボローニャだろ。奇跡的な思考の転換、見世物と化した世の中を楽しめ。無関係とは言えなくもないが、これはシチュエーションとして完璧な面白さをたたえている。どう転んでも面白い。

Bologna, ti voglio bene (好きだよ、ボローニャ)_e0017332_2304329.jpgトラックのハザード・ランプが点いている。あるいは運転手はちょっとの用事を済ませる間に、近所の奥さんとのひと時の情事に・・・・・・、高まる心、動き出す脳。ああ、マイホームでありホームタウンである、マイ・ホーム・タウンとしてのこの街。

Bologna, ti voglio bene (好きだよ、ボローニャ)_e0017332_2315876.jpg渋滞と人込みが象徴する如何ともし難い状況を打ち破ったのはレッカー車。ふさいだ道を覆面で素顔を隠した死刑執行人然として後ろ向きにやってくる。蛍光色の作業服を着た若い仕事人は300回くらいため息をつきながらもフットワーク軽く任務を遂行。「やるじゃねえか、若ぇの。」執行人の気持ちなど知る由もない観衆。装置が響かせる金属音は死刑宣告文。ニヤつく観客、無口な断頭台。バスの列はそのままレッカー車を先頭にした葬列にかわる。古い友人に別れを告げるかのような老人。「あばよ、戦友。」

「スペクタクル!スペクタクル!!」

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自分の街に帰ってきた途端に、同じ混乱が混乱でなくなるから面白いです。その意味で、あるいはローマも「住めば都」の例に漏れることはないかも知れません。住みたいかどうかはまた別の話ですけど。

by kantacantalavita | 2007-03-30 21:45 | 親愛なる日記


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