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KANTA CANTA LA VITA

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2007年 07月 27日

滞在許可証がないままイタリア国外に出ることについて(その1)

パリからボローニャに戻った昨日、家に入る前に近所の商店に入りました。安着祝いのビールを買うためです。友人宅からも近いこの店は、初めてではないにせよ、なじみの店というわけでもありません。店に入ると若い店員がひとこと。

「いらっしゃい、あ、ビールだね。」

どんな顔をしていたのでしょう、一言も発せずしてビールを買いに来たことを店員に悟らせた『KANTA CANTA LA VITA』です。

理由はともあれ、なんか、自分の街に帰ってきた気がします。

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滞在許可証の更新期間中は、定かではないにせよ、シェンゲン加盟国内の移動ができないという情報があって、厳密には更新期間中に、例えば僕ならイタリアから帰国する際も、直行便、あるいは加盟国以外の国々(アジアとかロシアとか)でトランジットしなければならないとも言われます。ただし実際にはほとんど無視されているとかで、事実、僕の帰国もフランクフルト乗り換えです。

にも書いたように僕は昨年の10月31日で滞在許可証が失効しているので、当然更新申請をしたわけです。あれから9ヶ月、未だに手元に許可証は届きません。書類に不備があったとか、そもそも却下されたとかではなく、滞りなく(というには長すぎる手続きを経て)申請を済ませ、後は発給待ち、という段階です。

ちょっと待ってください。9ヶ月間も滞在許可証の発行を待っているということは何を意味するのでしょう。それは、先の情報が正しいのであれば、「9ヶ月間イタリアから出られない」ということです。国境という概念が希薄になりつつあるヨーロッパで、そのメリットを享受できないどころか、イタリアに半ば拘束される。しかも、それは許可証発給のめどが立たないという点で、さらにいつまで続くかわからない。ある日どこかで、ぷちっと音がしました。ふざけるんじゃない。

交錯する情報、食い違う言い分。これは、もう、自ら体験するしかありません。幸か不幸か、もう留学期間は残り少ないのです。どこかで何かに引っかかった時は、「ああ、やっぱり違法なんだね」とでも言って諦めることにしよう。強制送還? 良いブログのネタじゃないか。ブラックリスト入り? 名前が載るならそれが何でもうれしいくらいさ。5年はイタリアに入れない? 6年経ったらまた来るよ。そう割り切って、ほとんどやけくその「不法渡航」は始まりました。ミラノのマルペンサ空港からアムステルダムのスキポール空港をまずは目指しました。

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【マルペンサ空港】

朝5時チェックイン開始ということもあり、空港に宿を取る。正確には、空港が宿。チェックインカウンターの前のベンチでの夜明かし。タフな貧乏旅行もこれが最後だよと、痛む尻をだましだましずらしずらし朝を待つ。

チェックイン時刻。遅々として解消されない発券待ちの行列。やたら細かい、機内持ち込みの荷物のサイズ確認。開いたり閉じたりが忙しいカウンター。散々待たされて、あと数人で僕の順番というところで、隣のカウンターが開き、僕の後ろに並ぶ人たちがなだれ込む。「お先にお待ちのお客様からどうぞ」、そんなものこの国には存在しない。一刻も早くこの国から出してくれ。声にならない叫びが聞えたか、ようやくカウンターに到着。パスポートとプリントアウトした予約番号をカウンターの若い兄ちゃんに渡す。イタリア語を話すことに安心したかのように微笑みを浮かべる兄ちゃん。予約番号をパタパタと打ち込み、予約を確認。パスポートの1ページ目をめくり閉じる。あの短時間で彼は何を見たのだろう。とにかく発券終了。ゲートへ向かう。

機内持ち込みの管理が厳しくなった昨今、たかが2時間のフライトに、危険を冒してまで持ち込むものなどなく、そもそも絶対必要なものなど何もない。寒さ対策のジャージと哀しいくらいに少ない貴重品。哀しいが楽勝である。金属探知の音もならない。関西国際空港からの出国ならば、審査があるのはこの後だったか前だったか、とにかくパスポート・コントロールがある。しかし、ここはマルペンサ空港2番ターミナル、目の前にはちょっとした飲食店と免税店。コントロールなし。どうやらイタリアからの出国はできそうだ。現にゲートは目の前だ。

搭乗。チケットとパスポートを空港職員に渡す。チラッと見る。搭乗者が僕本人であるかの確認をしているだけなのだろう。とにかく飛行機には乗った。さらばイタリア、また会える日まで(予定では8日後だよ)。

by kantacantalavita | 2007-07-27 01:15 | 親愛なる日記


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